研究課題/領域番号 |
23770121
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
真板 綾子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (60415106)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 構造生物学 / 翻訳後修飾 |
研究概要 |
"unloading(負荷軽減)"による筋萎縮の原因蛋白質であるCbl-bは、ユビキチン-プロテアソーム依存性の蛋白質分解経路において、ユビキチンを基質に付加する反応を触媒するユビキチンリガーゼ(E3)として働き、筋芽細胞の重要な増殖シグナル分子であるIRS-1の分解を促進する。Cbl-bのE3活性には、363番目のチロシンリン酸化が必須である。このリン酸化に伴うCbl-bの構造変化は、E3活性の発現に重要な役割を果すことが期待されるが、その詳細なメカニズムは明らかになっていない。そこで、本研究では、Cbl-bを対象とした構造生物学的研究を通じて、リン酸化によるCbl-bのユビキチンリガーゼ活性の調節機構の構造的基盤を解明することを目的とした。平成23年度は、まず、恒常的にユビキチンリガーゼ活性を持つ、リン酸化状態を模倣したCbl-b Y363E変異体(39-465:基質認識に関与するTKBドメインから触媒ドメインまでの領域)の大量発現・精製系の確立及び結晶化条件の探索を行った。大腸菌内でGST-SUMOとの融合タンパク質としてCbl-b Y363E(39-465)を発現させ、単離することにより、結晶化に必要な高純度タンパク質を十分量精製することができた。結晶化条件の探索では、0.2M Ammonium phosphate dibasic/20% PEG3350の条件にて、比較的良好な結晶が得られた。この結晶を用いてX線回折実験を行ったが、現在までのところ、良好なX線回折データは得られていない。抗ユビキチン化ペプチドCblinや基質アナログであるリン酸化ペプチドとの共結晶化も試みたが、改善されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年度は、Cbl-b Y363E(39-465)変異体の大量調製系の確立と結晶化条件の探索を行う計画であった。前者の結晶化に必要な純度と量を得るための大量調製系の確立に関しては、比較的早く達成することができた。一方、後者の結晶化条件の探索に関しては、0.2M Ammonium phosphate dibasic/20% PEG3350の条件にて結晶が得られたが、その後のX線回折実験では、良好なX線回折データは得られなかった。抗ユビキチン化ペプチドCblinや他の基質アナログとの共結晶化の検討も行ったが改善されなかった。上記のように、平成23年度までに構造解析可能なX線回折データが得られなかったため、「やや遅れている。」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は、Cbl-bのチロシンリン酸化による構造変化を調べるために、リン酸化状態を模倣したCbl-b Y363E(39-465)変異体の結晶化のための大量調製系の確立及び結晶化条件の探索を行った。結晶化スクリーニング実験を試みた結果、市販のキットで良好な結晶を得ることができた。その後、この結晶のX線回折実験を行ったが、良好なX線回折データを得ることができなかった。また、ごく最近になって、海外のグループから同じファミリータンパク質であるc-Cblのリン酸化状態の結晶構造が報告され、リン酸化に伴う構造変化及び活性発現機構が明らかにされた。c-CblとCbl-bのアミノ酸の配列上の相同性から、Cbl-bもc-Cblと同様の現象がおこっていることが予想される。したがって、当初の研究計画を変更する必要性が生じた。今後は、Cbl-bと基質であるチロシンリン酸化状態のIRS-1の結合に着目し、その相互作用様式を明らかにしていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進行の遅れや研究計画の変更に伴い、前年度に引き続き平成24年度も、X線構造解析のための結晶化条件の探索を行う予定である。また、前年度では、よい結晶が得られなかったことに伴い、放射光施設での測定回数が予定よりも少なかったため、出張費、消耗品、測定にかかる費用等(650,899円)が繰越になった。この繰越金は、次年度の放射光施設での測定にかかる費用として使用する予定である。次年度の研究費は、標的タンパク質の結晶化を行うために必要となる大腸菌培養用試薬及びタンパク質精製用試薬類及び結晶化用試薬類の購入に使用する。また、解析する手段としては、X線回折法に加え、NMR(核磁気共鳴)法も用いることより、試料を標識するための安定同位体も購入する予定である。
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