研究課題/領域番号 |
23770122
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
吉田 裕美 香川大学, 総合生命科学研究センター, 准教授 (10313305)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | L-リボースイソメラーゼ / L-ラムノースイソメラーゼ / X線結晶解析 / 糖異性化酵素 / 希少糖 / 放射光 / 部位特異的変異 |
研究概要 |
本研究は、天然には微量にしか存在しない糖、「希少糖」の生産に利用される単糖異性化酵素(希少糖生産酵素)として、他のタンパク質と相同性がなく、新規な立体構造・触媒反応機構を有していると予想されるAcinetobacter sp. L-リボースイソメラーゼ(L-RI)の立体構造の決定、新規単糖異性化反応の解明を目指すとともに、これまでに構造を決定してきた希少糖生産酵素の糖環開環機構を含めた触媒反応機構の解明に関する構造生物学的研究を展開することを目的とした。今年度は、当初の計画通り、セレノメチオニン置換体を用いることで、L-RIの初期位相が得られ、立体構造を決定することができた。L-RIは二量体を形成しており、その単量体の構造は大腸菌O157:H7に由来するD-リキソースイソメラーゼの構造と類似性が見られたが、両者のアミノ酸配列の相同性は18%程度であった。L-RIの推定活性部位には金属イオンが1つ結合しており、触媒残基も類推することができたが、基質との複合体構造が得られていないことから、触媒反応機構の解明には至っていない。 希少糖生産酵素の一つとして、既に構造決定を報告してきたPseudomonas stutzeri 由来L-ラムノースイソメラーゼ(L-RhI)において、活性部位近傍に変異を導入した酵素を構築した。その中で、酵素活性が完全に失われているものではなく、若干の酵素活性を維持している変異酵素のX線結晶構造解析を行うことにより、環状の基質と開環した基質が混在した状態での構造解析に成功した。基質となる糖環の開環は、5員環と6員環でその開環機構が異なることが示唆され、この糖環の認識・開環機構の違いが、異性化反応におけるカイネティクスに影響を与えていると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、当初の計画通り、L-RIの構造決定、L-RhIの糖環開環機構の解明の目標に到達した。次年度に計画している、L-RIの基質との複合体構造も得ることができていれば、当初の計画以上に進展していると判断された。
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今後の研究の推進方策 |
順調に進展しているので、L-RIの基質もしくは阻害剤との複合体のX線結晶解析を行い、基質認識・触媒反応機構について原子レベルでの解明を行っていく。順調に複合体が得られない場合は、不活型変異酵素の構築と変異酵素の複合体解析から触媒反応機構の解明を目指していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
変異酵素の構築、複合体構造の決定の為に使用する消耗品費、放射光施設におけるデータ収集の為の実験旅費、研究成果発表の為の旅費を必要とする。また、論文投稿に関わる諸費用をその他の費用として使用する。
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