研究概要 |
本研究は、天然には微量にしか存在しない糖、「希少糖」の生産に利用される単糖異性化酵素(希少糖生産酵素)として、他のタンパク質と相同性がなく、新規な立体構造・触媒反応機構を有していると予想される土壌菌Acinetobacter sp.由来 L-リボースイソメラーゼ(L-RI)について、その立体構造の決定と新規単糖異性化反応の解明を目指すとともに、これまでに構造を決定してきた希少糖生産酵素の糖環開環機構を含めた触媒反応機構の解明に関する構造生物学的研究を展開することを目的とした。 L-RIは希少糖L-リボースとL-リブロース間の可逆的な異性化反応を触媒する酵素であり、これらを基質とする酵素は極めて少なく、希少糖生産には有用な酵素である。初年度は、L-RIの構造を決定し、最終年度はリガンドが結合した複合体構造を得ることができた。構造解析の結果、L-RIは二量体を形成し、単量体の構造は大腸菌O157:H7に由来するD-リキソースイソメラーゼの構造と類似性が見られた。活性部位には金属イオンが1つ結合し、3つのHis残基が結合に関与していた。また、触媒反応には2つのGluが触媒残基として関わっていると考えられた。 希少糖生産酵素の一つであるPseudomonas stutzeri 由来L-ラムノースイソメラーゼ(L-RhI)において、野生型の基質との複合体構造では、基質のL-ラムノースは常に開環した構造をとっていた。活性部位近傍に変異を導入した酵素の構築と構造解析を続けた結果、酵素活性を完全に失った変異酵素では5員環のL-ラムニュロフラノース、若干の酵素活性を維持している変異酵素では6員環のL-ラムノピラノースが結合した構造が得られ、最終年度にL-RhIの糖の開環を含めた触媒反応機構について報告した(Yoshida et al., (2013) FEBS Open Bio)。
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