研究課題/領域番号 |
23770129
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
安達 基泰 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (60293958)
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キーワード | HIV / プロテアーゼ / 中性子 / 結晶 / 構造解析 |
研究概要 |
本研究では、阻害剤非結合型(apo型)HIV-PRの活性部位に存在する水和水の立体構造を中性子結晶解析によって決定し、その特徴を解析する。得られる水和水の構造情報から、阻害剤の結合時に生じる水和水の脱水和のエントロピーの効果と阻害剤非結合状態における触媒残基の正確なプロトン化状態を把握する。これらの情報をholo型構造と比較することによって、水和水の脱水和効果を考慮した薬物設計の高度化に資することを目的としている。 本研究を達成するためのもっとも重要な課題は、高分解能回折能を有する高質なapo型HIV-PR結晶の取得である。本年度は、そのapo型HIV-PR結晶を取得に向けて、1.基質複合体の結晶化および、2.クロスリンク型HIV-PRの調製と結晶構造解析を行った。 1. 8残基からなる4種類の基質を化学合成した後、それらの基質とHIV-PRとの複合体の結晶を4℃の低温条件で試みたが、結晶化には至っていない。 2. HIV-PRは、ホモ2量体であることから、分子内に2回対称軸をもっている。そこで、その2回対称軸付近に一つのCys残基を導入し、プロトマー間でSS結合を形成させるI50CおよびG51C変異体を分子設計した。両変異体に関して大腸菌発現系を使って発現、再生および精製後、結晶化実験を実施した結果、正八面体状の単結晶を得ることに成功した。X線回折実験の結果、野生型apo型HIV-PR結晶よりも高い2.0Åの高分解能回折データの取得し、結晶構造解析に成功した。 本年度(H24年度)、新たに調製したapo型HIV-PR(I50CおよびG51C)の結晶構造解析おいて、高分解能化に成功したことは、本研究において重要な成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画に従って、高分解能の回折データを与えるKNI-272複合体結晶(holo型HIV-PR)を結晶核としてマクロシーディングを行い、基質複合体のHIV-PRの結晶の作製を試みたところ、結晶の取得が困難であった。一方で、これまでに報告がない新たな結晶を作製し、高分解能の構造解析を実施するために、クロスリンク型HIV-PRを新たに設計した。今回設計した変異体は、HIV-PRの自由度の高い領域を固定するために、高分解能化が期待できる。実際に、試料を調製し、結晶を取得後、2.0Åの高分解能回折データを収集し、高分解能化に成功した。 さらに、昨年度(H23年度)調製した1本鎖型およびクロスリンク型HIV-PRを用いて、表面プラズモン共鳴(SPR)により、臨床で使用されている2種の阻害剤を含め計10種の阻害剤について親和性を評価した。HIV-PRの解離の効果が含まれない状態での解析に成功した初めての例である。SPRを用いた阻害剤の評価は、薬物設計の高度化に貢献できることから、当初の予定以上の達成度がある。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(H25年度)は、引き続き高分解能X線構造解析が可能な結晶の取得と中性子結晶構造解析用のapo型HIV-PRの結晶の取得に取り組む。さらに、これまで得られた成果に関して、論文発表を行う。 また、apo型HIV-PRの結晶の作製の際に、阻害剤結合部位に存在し、基質(阻害剤)の蓋となるフラップ構造が、結晶内の分子パッキングに影響していることが考えられる。そこで、分解能が向上するような異なる分子パッキングを有する結晶を作製するために、49番目のあるいは52番目のGlyをCysに置換し、SS結合によりフラップを固定した変異体を作製する。モデリングによる検討の結果、両変異体の作製により、クローズ型の構造の解析が可能であると考えらる。 なお、H25年度に中性子結晶構造解析用に試料を大量に調製するために、H24年度の一部の研究費をH25年度に繰り越した。
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次年度の研究費の使用計画 |
HIVプロテアーゼの大量調製と大型結晶取得のため、変異体の遺伝子作製に必要な消耗品、培養用の消耗品、結晶作製および構造解析に必要な消耗品の購入に使用する。また放射光利用施設へのデータ収集のための旅費、成果公開のため学会発表の旅費として使用する。
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