研究課題/領域番号 |
23770136
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
斎藤 将樹 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (50400271)
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キーワード | 一次線毛 / 細胞質ダイニン軽鎖 / エンドサイトーシス / 細胞周期 |
研究概要 |
私は昨年度、一次線毛の短縮にRhoファミリー低分子量Gタンパク質Cdc42、アクチン重合調節タンパク質ARPC2およびアネキシンA2が関与することを見出した。これまで蓄積された結果より、Tctex-1リン酸化に伴い、アクチン重合を介した一次線毛の短縮が引き起こされることが示された。また私は以前、早期エンドソーム形成が一次線毛の短縮に関わることを示した。そこで今年度、Tctex-1リン酸化とエンドソーム形成の関係について検討した。 i) 一次線毛の短縮における早期エンドソーム形成の役割。クラスリンおよびダイナミンは、早期エンドソーム形成に関与する。そこで、それぞれの機能をノックダウンおよび特異的阻害薬によって減弱したところ、一次線毛の短縮は抑制された。また、クラスリンのノックダウンによる短縮抑制は、Tctex-1リン酸化変異体 (活性化変異体) の過剰発現によってレスキューされたことより、Tctex-1リン酸化は早期エンドソーム形成を介した一次線毛の短縮に関与することが考えられた。 ii) 一次線毛の短縮における後期エンドソーム形成の役割。Rab7は後期エンドソームの形成に関与する。そこで、Rab7の活性変異体および不活性変異体を過剰発現したが、一次線毛の短縮に影響は見られなかった。これより、後期エンドソーム形成は一次線毛の短縮には直接的には関与しない可能性が示された。 iii) 細胞周期調節におけるエンドソーム形成の役割。細胞周期マーカーKi67の陽性細胞数は、ダイナミン特異的阻害薬によって減少した。このことから、一次線毛を介した細胞周期調節は、エンドソーム形成によって制御されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究より、Tctex-1がリン酸化された時、アクチン重合と早期エンドソーム形成を介して一次線毛の短縮の引き起こされること、ならびに細胞周期がG0期からG1/S期へ再駆動することが見出された。これらの成果は、本年度までに予定した研究の大部分であることから、研究の目的はおおむね順調であると言える。しかし、一次線毛の内部あるいは近傍など、一次線毛のいずれの局所でエンドソーム形成が引き起こされるのかについては検討出来ておらず、次年度の検討課題である。
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今後の研究の推進方策 |
私はこれまで、早期エンドソームの形成が一次線毛の短縮に重要であるという結果を得た。そこで、一次線毛の内部あるいは近傍など、一次線毛のいずれの局所でエンドソーム形成が引き起こされるのか検討する。また、イノシトールリン酸 5-ホスファターゼであるINPP5Eは、一次線毛の不安定化に関与するため、短縮を制御する可能性も考えられる。そこで、INPP5Eなど種々のイノシトールリン脂質代謝酵素の役割を検討することを通じ、一次線毛の短縮機構を包括的に解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に必要な試薬や抗体等の購入費として次年度研究費の大半を充てる。また、次年度にはこれまでの研究成果を学術論文に投稿する予定のため、外国語論文の校閲費として35千円、論文投稿料として100千円をそれぞれ使用する。さらに、研究成果を国内学会に発表する予定のため、成果発表旅費として100千円を充てる。
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