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2011 年度 実施状況報告書

膜貫通型一酸化窒素還元酵素による亜酸化窒素生成機構の結晶構造学的解析

研究課題

研究課題/領域番号 23770144
研究機関鳥取大学

研究代表者

日野 智也  鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (40373360)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード一酸化窒素還元酵素 / 亜酸化窒素 / 呼吸酵素 / 分子進化 / 抗体 / 膜蛋白質 / X線結晶構造解析
研究概要

一酸化窒素還元酵素(NOR)は、土壌バクテリアや病原因菌などが嫌気的環境で行う硝酸呼吸において、一酸化窒素を亜酸化窒素に還元する反応を触媒する膜貫通型酵素である。本研究者はすでに、チトクロムcより電子を受容する緑膿菌由来NOR(cNOR)に関し、モノクローナル抗体との共結晶化を行うことで、休止状態の立体構造決定に成功した。本研究では、さらに、反応中間状態である還元型や基質あるいは基質アナログとなるガス分子結合型結晶構造を決定することにより、NORが行う一酸化窒素の還元触媒反応機構を原子レベルで解明することを目的としている。本年度は、結晶化の再現性を高めるための条件検討および結晶の還元や基質アナログの添加を行うための結晶ソーキングの条件検討を行った。その結果、ミクロシーディングを採用することでX線回折実験に適したサイズの結晶が非常に効率よく得られるようになった。また、還元系として、溶液状態での活性測定で用いられる、アスコルビン酸(還元剤)とTMPD(メディエーター)の組み合わせでは、結晶状態での還元は不十分であることが判明した。一方、ジチオナイトによる還元では十分にcNORを還元しうることがわかり、還元剤濃度、ソーキング時間等を検討することにより、結晶状態のcNORを還元する手法を確立した。 以上の最適化を行うことで、cNORの還元型構造を2.7Å分解能で決定できた。その結果、活性部位近傍の構造変化はほとんど見られなかったが、一方で、活性部位を構成する非へム鉄FeBとヘムb3の間を架橋していた酸素原子が消失し、この部位に基質が結合しうる状態となっていることが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、緑膿菌由来cNORの還元状態や基質結合型などの反応中間状態の結晶構造を決定し、cNORが触媒する一酸化窒素還元反応を原子レベルで解明することである。当初の計画では、本年度は分解能の向上と反応中間体調製の条件検討を予定していた。そのうち、分解能の向上については、現時点では達成できていないが、これまでの結晶化とは異なる手法として、膜蛋白質の結晶化に有効なバイセル結晶化法を試み、新たな結晶化条件を見出した。この結晶化条件について最適化を行うことで分解能の向上が期待できる。また、反応中間体調製については、結晶化の再現性向上を達成し、ソーキングによる還元型結晶の調製条件も確立した。既に、反応の初発段階である還元型の結晶構造も決定できており、来年度の基質分子あるいは基質アナログとの複合体結晶の調製とその構造解析も容易に行うことができる段階にある。

今後の研究の推進方策

平成24年度は、バイセル法によりできた結晶について最適化を行い、分解能の向上を目指す。また、酸化型結晶をソーキングすることにより、還元とともに基質アナログ複合体の結晶調製を行い、その複合体結晶構造解析を行う。基質アナログとしては、シアン化カリウム、アジ化ナトリウム、一酸化炭素を予定している。また、本来の基質である一酸化窒素についても、同様のソーキング法で処理した結晶を用いて、構造解析を行う。

次年度の研究費の使用計画

次年度使用額として55円を計上しているが、少額であるため物品の購入ができず、翌年度での物品購入に充てるために繰り越した。翌年度の研究費は、培地、界面活性剤、X線回折実験用器具などの消耗品の購入に充てる(80万円)。また、研究成果の発表のための学会参加や研究打ち合わせなどの旅費も10万円程度使用する計画である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件)

  • [雑誌論文] Crystal structure of quinol-dependent nitric oxide reductase from Geobacillus stearothermophilus2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Matsumoto, T. Tosha, A. V. Pisliakov, T. Hino, H. Sugimoto, S. Nagano, Y. Sugita, Y. Shiro
    • 雑誌名

      Nature Struct. mol. Biol.

      巻: 19 ページ: 238-245

    • 査読あり
  • [学会発表] 膜タンパク質結晶化促進ツールとしての抗体利用2012

    • 著者名/発表者名
      日野智也
    • 学会等名
      日本生物工学会西日本支部シンポジウム(招待講演)
    • 発表場所
      鳥取
    • 年月日
      2012-01-21
  • [学会発表] 緑膿菌由来膜タンパク質一酸化窒素還元酵素の抗体を用いた結晶化と構造解析2011

    • 著者名/発表者名
      日野智也
    • 学会等名
      日本生化学会(招待講演)
    • 発表場所
      京都
    • 年月日
      2011-09-24
  • [学会発表] 一酸化窒素還元酵素の立体構造から探る呼吸酵素の分子進化2011

    • 著者名/発表者名
      日野智也
    • 学会等名
      日本生物物理学会(招待講演)
    • 発表場所
      姫路
    • 年月日
      2011-09-16
  • [学会発表] 抗体を用いた膜タンパク質結晶化の実際2011

    • 著者名/発表者名
      日野智也
    • 学会等名
      日本蛋白質科学会(招待講演)
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2011-06-09
  • [学会発表] 緑膿菌由来一酸化窒素還元酵素の結晶構造解析2011

    • 著者名/発表者名
      日野智也
    • 学会等名
      日本蛋白質科学会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2011-06-08

URL: 

公開日: 2013-07-10  

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