研究課題
植物の発生や成長には、細胞においてさまざまな機能性蛋白質が適切な場所に分布することが重要である。近年の研究により、細胞膜において偏って分布するトランスポーターなどのタンパク質が同定されており、一部のものについては非対称局在がその機能に重要であることが実験的に確認されている。クチクラの形成に関わる PEL1 などの蛋白質は、地上部の表皮細胞の細胞膜上で外界側の面に偏って局在していることから、細胞極性に従って分布が制御されていると考えられる。しかし、この非対称局在に関わる位置情報や輸送因子は特定されていない。本研究ではこれらの蛋白質の局在制御に関わるメカニズムに関する知見を得ることを目的として、研究を行った。これまでに、PEL1-GFP 融合蛋白質を発現するシロイヌナズナの系統について、エチルメタンスルホン酸により変異原処理を行い、約 1000 個体の M1 個体由来の M2 系統を作成した。この系統より、クチクラの形成あるいは機能に異常を示す変異体の候補を、水溶性色素を用いた検定法(トルイジンブルー法)により選抜した。本年度は、それらの系統のうちの 92 系統について、PEL1-GFP の局在を観察し、局在に異常を示す個体が分離する系統を同定した。今後、後代でも再現的に同様な異常を示す個体が出現するかを確認し、遺伝様式を確認することで、PEL1 の局在制御因子に変異を持つ変異系統が見つかると期待される。また、変異型 ARF1 を発現させることにより、細胞内の膜輸送に強い異常を示す系統を作成した。今後、この系統を用いて PEL1 やクチクラの配置の解析をすすめることで、細胞極性を支える分子メカニズムの理解が深まると期待される。
すべて 2014
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Plant & Cell Physiology
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10.1093/pcp/pct196