研究課題
初期エンドソームからの選別輸送は、細胞外から取り込んだ物質の選別を行う場として知られており、シグナル伝達においても重要な役割を果たしているが、その分子メカニズムは多くの謎が残っている。なかでも輸送の最終段階である膜の変形、切断については関与する分子も含めてほとんどわかっていない。本研究では初期エンドソームからの選別輸送に着目し、その脂質膜変形/切断に関与する分子の同定/解析を行う。昨年度、我々は輸送小胞切断に必須のタンパク質であるダイナミンが初期エンドソームからの輸送に必須であること(Mesaki et al., PLoS ONE 2011)、さらに細胞膜アクチンとその制御因子であるコルタクチンも初期エンドソームで働いていることを見出し、報告した(Ohashi et al., PLoS ONE 2011, Tanabe et al., Commun. Integr. Biol. 2011)。我々はさらに阻害剤を用いたスクリーニングを行い、初期エンドソームに必須のタンパク質として新たに脂質膜リン酸化酵素を同定した。さらに酵素の産生するリン脂質が初期エンドソーム上に集積しており、初期エンドソーム上のリン脂質産生に必須である酵素であることを証明した。更に、そのリン脂質の下流にあると考えられる細胞内輸送制御タンパク質も同定し、その制御メカニズム解明に大きく貢献した(論文投稿中)
2: おおむね順調に進展している
23年度に計画していた輸送関連タンパク質の同定/解析や複合体形成の解析はほぼ順調に進んでおり、その成果も学術論文の形で発表している(Mesaki et al., 2011, Ohashi et al., 2011, Tanabe et al., 2011)。24年度は初期エンドソームに必要な脂質リン酸化酵素について研究を進め、その産物であるフォスファチジルイノシトール4リン酸が初期エンドソーム上にあることを世界で初めて見出した(論文投稿中)。以上のことから、初期エンドソームからの輸送に必要なタンパク質の同定・解析は順調に進んでおり、その成果も着実に発表できているといえる。また、23年度の課題であったタンパク質間相互作用や電子顕微鏡を用いた微細構造の解析についても実験手技が確立し、順調に動き始めている。一方で所属の移動に伴う研究環境の変化があり、実験手技の変更もあったため、これらの実験手技を用いた成果の発表が多少遅れている。そのため、業績面・材料の面でも予定通りに進展してはいるが②の評価とした。
これまでは主に細胞レベルでの解析を行なってきたが、同定したタンパク質の分子レベルでの役割については明らかにできていない。そこで今後はさらなる機構解明を目指し、生化学的アプローチ・形態学的アプローチを中心とした詳細な分子機構解明を目指す。タンパク質ー脂質間相互作用について、新たに我々が確立した分子間相互作用解析を用いた生化学的解析を行う。さらに電子顕微鏡を用いた脂質膜形態形成解析を行い、分子レベルでの制御機構解明を目指す。一方、我々が同定したタンパク質の酵素活性についても、タンパク質間相互作用もしくはタンパク質-脂質間相互作用がどのような役割を演じているのか明らかにする。
新たに確立した分子間相互作用解析方法を用いて、タンパク質ー脂質間相互作用の解析を行う。また電子顕微鏡を用いた解析、酵素活性測定などの形態学的・生化学的アプローチを行う。繰り越し金は、これら解析系の消耗品費に充てる。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 1件)
Journal of Clinical Investigation
巻: 123 ページ: 1123-37
10.1172/JCI63711
Peripheral Neuropathy
巻: 1 ページ: 3-20