研究課題/領域番号 |
23770151
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
木田 祐一郎 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (10423899)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | タンパク質膜透過 / 膜タンパク質 / トランスロコン / 小胞体 / シグナル配列 / 膜トポロジー / 生体膜 / 細胞小器官 |
研究概要 |
1. 小胞体トランスロコン(タンパク質膜透過チャネル)を介した膜タンパク質の構造形成において、膜貫通配列周辺の正荷電アミノ酸残基は貫通方向(膜トポロジー)を左右する主要因である。この正荷電残基をモデル分泌タンパク質に導入したところ、個数に応じて膜透過が減速・停止したことより、正荷電残基のみで透過阻害作用を発揮することを見出した。また、正荷電残基のクラスターが細胞質側表面で静電的相互作用により捕捉されることも分かった。これらの結果は、膜トポロジー決定の際の正荷電残基の作用機序の理解につながる成果である。(Fujita et al, JCS 2012)2. マルチスパン膜タンパク質である赤血球バンド3の内腔側ループにストレプトアビジンと結合するタグ配列を挿入し無細胞系にて小胞体膜に組み込ませたところ、細胞質側へのストレプトアビジン添加により複数のループで膜透過が阻害された。またこれらループの膜透過は、直後の膜貫通配列への変異導入によって減弱した。マルチスパン膜タンパク質のフォールディングにおいて、内腔側ループの中には一旦細胞質側に露出した後透過するものが存在すること、かつその膜透過に下流の膜貫通配列がかかわることが示唆された。(Yabuki, Kida et al, 投稿準備中)3. 膜透過中のポリペプチド鎖内に現れた膜貫通配列は、トランスロコンで停止し、脂質環境へと側方輸送される。系統的に疎水性を変化させた疎水性配列セットを用いて、各ステップに要求される疎水性度を検討した結果、トランスロコンによる認識に伴う透過停止と脂質膜への組み込みとでは異なる疎水性度が要求されることが分かった。また、透過停止しつつ膜組み込み不全の低疎水性配列が、トランスロコン内に停留されることも分かった。現在、疎水性配列のトランスロコン内外での挙動について更に解析を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
小胞体トランスロコンによる膜貫通配列の認識及び膜組み込み機構の解析については、前述の通り順調に進んでいる。またニワトリDT40細胞を用いたトランスロコン関連因子の解析については、分子シャペロンHSP70と協調して機能するJドメインを小胞体内腔側に持つ膜タンパク質、Sec63及びDNAJC1についてノックアウト株を作成中であり、現在ヘテロノックアウト細胞は構築できている。
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今後の研究の推進方策 |
小胞体トランスロコンによる膜貫通配列の認識及び膜組み込み機構の解析については、昨年度に引き続き遂行し成果をまとめる。DT40細胞を用いたトランスロコン関連因子の解析については、Sec63及びDNAJC1についてノックアウト株を作成し、タンパク質膜透過への内腔側分子シャペロンの寄与について明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
小胞体膜透過・組み込み解析に使用する生化学実験試薬、遺伝子工学的実験試薬、プラスチック器具、DT40等を扱う培養細胞実験に使用する培地、試薬、プラスチック器具など、消耗品費には多くの費用を割く必要がある。また、本研究の成果を発表するための学会参加費、旅費、論文出版にかかる費用も相応に割り当てる。
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