研究課題/領域番号 |
23770152
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
柳澤 幸子 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (60557982)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 生体エネルギー変換 / 振動分光 / 酸素活性化 / 金属タンパク質 / 吸収スペクトル |
研究概要 |
本研究では、呼吸鎖電子伝達系末端において酸素分子を水にまで還元する反応と共役して、プロトンを膜の内側から外側へと能動輸送するチトクロム酸化酵素(CcO)の酸素還元反応とプロトン輸送反応、およびそれらの共役の仕組みの解明を目指す。酸素還元反応のいくつかの反応中間体が振動分光法により既に明らかにされているが、本研究では、それらについて吸収スペクトルを決定する。理由として、吸収スペクトルの測定は他の手法と組み合わせる事が容易であり、共役機構解明の上で必要不可欠な動的構造解析を種々の手法を用いて行なう時に、酸素還元反応のどの段階を検出しているのかを知る基準となるからである。本研究では酵素反応追跡用人工心肺装置を用い、時間分解共鳴ラマン分光法によりウシ心筋由来 CcOの酸素還元反応を追跡する。この装置を使うと比較的少ない試料で測定が可能であり、また、酸素存在下でCO結合型CcOに590 nmのレーザー光を照射してCOを光解離して一斉に酸素還元反応を開始することが出来る。目的の達成のためには、ラマン検出用レーザー光と同軸に吸収スペクトル測定用白色光を重ね、酸素還元反応の開始後同時刻においてラマンスペクトルと吸収スペクトルを測定し、それぞれの吸収スペクトルが酸素還元反応のどの段階のものであるのかを明らかにし、それによって反応中間体の吸収スペクトルを決定するというものである。本年度においては人工心肺装置の改良と測定条件の検討により必要とする酵素試料を減らすことと、ラマン及び吸収スペクトルの同時測定のための光学系の確立が大きな目標であった。前者については主に装置を改良することにより、また、後者については予定していた光学系を組み立てまた改良することによりほぼ完成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度においては人工心肺装置の改良を行い、必要とする酵素試料の量を減らすことを一つの目標としたが、一回の測定に必要な酵素量はこれまでの半分以下となった。また、改良により、より再現性の高いスペクトルが得られるようになったため、一回の測定で得られるデータが格段に増えた。また、ラマンおよび吸収スペクトルを同時に測定するための光学系の構築がもう一つの大きな課題であった。これについてもほぼ完成し、既に同時測定を行っている。以上のことから研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題としては、ラマンスペクトル測定用レーザーと吸収スペクトル測定用白色光源をより効率よくサンプル点に導くための改良を行う。特に吸収スペクトルを測定しうる波長領域についての検討が必要である。また、様々な改良を重ねる中で酵素反応追跡用人工心肺装置における肺の切換えや、光源の切換え等の操作が煩雑になってきており、出来るだけ機械制御を導入する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記の課題を解決するために光学部品を購入する。また、機械制御をするために必要な工作部品及び制御のためのコンピューターの購入またはそのシステムの発注を行う。
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