研究課題/領域番号 |
23770153
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研究機関 | 獨協医科大学 |
研究代表者 |
青山 智英子 獨協医科大学, 医学部, 助教 (90420778)
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キーワード | 生理活性脂質 / リゾホスホリパーゼD |
研究概要 |
強力な生理活性脂質であるリゾホスファチジン酸(LPA)は細胞増殖や細胞運動など様々な現象に関わる事が知られているが、その産生メカニズムについては不明な点も多く残されている。我々はリゾホスファチジルコリンからLPAを産生する酵素リゾホスホリパーゼD(lysoPLD)について、新たに細胞内型lysoPLDをラット脳よりの精製することに成功し、その精製画分中に三量体Gタンパク質のGαqおよびGβ1が含まれている事を明らかにしてきた。 細胞にタグ融合タンパク質として発現、精製したGαqはlysoPLD活性を示し、同じサブファミリーに属するGα11, Gα14, Gα15のうちGα11はGαqと同程度の、Gα14, Gα15はごく弱いlysoPLD活性をしめした。RNAiによりGαq/11タンパク質のノックダウンを行いlysoPLD活性の測定を行ったところ、lysoPLD活性の低下はあまり見られなかったことから、lysoPLD活性を持つ他の分子の存在が示唆された。そこで異なるサブファミリーに属するGαサブユニットについても解析を行ったところGα12にやはり弱いながらもlysoPLD活性が見いだされた。またGα12の基質特異性はGαqとほぼ同様であったが、ミカエリス定数は大きく異なっていた。以上の事から細胞内にはlysoPLD活性を持つ複数の分子種が存在している事が明らかとなった。 またGαqはパルミトイル化サイト、βサブユニットとの相互作用部位の変異による細胞内局在の変化がlysoPLD活性に大きな影響を与えたのに対し、Gα12ではこれらの変異で細胞内局在は変化せずlysoPLD活性にも変化は無かった。この事からlysoPLD活性の発現には修飾自体ではなく細胞膜への正しい局在と、おそらく膜における何らかの活性調節因子との相互作用が必須である可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Gαq/11との相互作用タンパク質の解析を行う予定であったが、解析に必要な試料を十分量得る事が困難であった事と、RNAiによりGαq/11タンパク質のノックダウンを行いlysoPLD活性の測定を行ったがlysoPLD活性の低下はあまり見られなかったことから、lysoPLD活性を持つ他の分子の存在が示唆されたため、予定を変更しlysoPLD活性を持つ可能性のあるGαサブユニット類似タンパク質についての解析を行う事としたため
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今後の研究の推進方策 |
あらたにGα12もlysoPLD活性を持つ事が明らかになったがGαqに比べその活性は高いものではなく、他にもlysoPLD活性を持つ分子が存在する可能性が考えられる事から、他のGα類似タンパク質に対してもlysoPLD活性を持つものがあるかタグ融合タンパク質として発現、精製し検討する。また細胞内局在による活性調節について、局在の変化する各種変異体の作製を行う事により解析を行う。活性調節にかかわる相互作用タンパク質についても、タグ融合Gαqを恒常的に発現する細胞株を作製し大量に試料を得る事が可能となったので解析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度に使用する研究費が生じたのは、一部実験計画に変更を生じた事と、既にある試薬や共通物品の利用等による効率の良い研究費の使用の結果であると考える。次年度にはタグ融合タンパク質の発現、精製に必要な試薬や、相互作用分子を解析するにあたりそれぞれの特異的抗体の購入が必要になるため、研究費の使用は主に試薬、消耗品の購入に当てる事を計画している。
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