研究課題/領域番号 |
23770157
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
山田 康之 立教大学, 理学部, 准教授 (80386507)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | 生体エネルギー変換 / 活性調節 / 酵素 / 構造機能相関 / アロステリック |
研究概要 |
本年度は、枯草菌F1-ATPase(BF1)の基本的な性質を明らかにすることができた。εサブユニットを含まない状態のBF1は、定常状態での活性が好熱菌F1(TF1)の30分の1程度と極めて低かった。ADP阻害状態を解除するとされる界面活性剤LDAOを添加すると、200倍程度まで活性化されたことから、BF1ではADP阻害が非常に強力である事がわかった。また、基質であるATPの濃度を下げたほうが活性が上がるという現象が見られた。低濃度ATPでは、ADP阻害に陥るBF1の割合が低下することが原因であると考えられた。BF1にεサブユニットを加えると、εサブユニットによる阻害は見られず、低濃度ATPにおいて活性が上昇する様子が観察された。これは、εサブユニットによってADP阻害が軽減されたためと考えられた。以上のようなBF1におけるADP阻害とε阻害の排他的な関係は、我々のこれまでの主張と合致するものであった。ADP阻害とεサブユニットの関係を更に詳細に調べるために、εサブユニットをいわゆる阻害型の構造に固定できる変異体を作製した。この変異体でεサブユニットを阻害型に固定してみたところ、BF1の活性が上昇する様子が観察された。また、阻害型の構造に固定した変異型酵素にLDAOを添加すると、活性化はほとんど見られず、野生型よりも低い活性を示した。すなわち、LDAOを添加した、ADP阻害の影響の小さい条件下では、εが阻害サブユニットとして機能していると言える。これらの結果をまとめた論文を執筆中である。この他、枯草菌ATP合成酵素のホロ酵素についても活性測定条件を検討し、基本的な測定を終えることができた。その結果、枯草菌ATP合成酵素においても、εへのATP結合に依存した脱共役状態が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書に記載の平成23年度研究実施計画に挙げた項目の多くを達成する事ができた。枯草菌細胞膜からのATP合成酵素の精製はまだ取り掛かっていないので次年度に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
枯草菌の変異株を作成し、枯草菌ATP合成酵素のホロ酵素での機能解析を進める。また、枯草菌細胞膜からのATP合成酵素の精製条件を検討する。この他、枯草菌に細胞内ATP濃度センサータンパク質を組み込む実験にとりかかる。
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次年度の研究費の使用計画 |
これらの実験を進めるのに必要な試薬などの消耗品の購入が主な研究費の使用目的となる。繰越分については、当初平成23年度に予定していた、枯草菌細胞膜からのATP合成酵素の精製に必要な界面活性剤などの購入に充てる計画である。
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