研究実績の概要 |
ナトリウムイオン輸送型ATP合成酵素において、イオン輸送に関わるアミノ酸残基を明らかにすることを目的とした。そのため、P.modestum由来のナトリウムイオン輸送型のFoと好熱菌由来のF1からなるハイブリッドFoF1の発現系を用いて、ナトリウムイオン輸送機構の解析を行った。 ナトリウムイオン輸送型ATP合成酵素のイオン輸送に関わるaサブユニットの細胞質側のアミノ酸残基である211-225番目と、ペリプラズム側のアミノ酸残基である227-236番目のアミノ酸残基をそれぞれシステインに変異させ、それぞれのシステイン残基をNEMで修飾して活性を測定した。 ナトリウムイオン輸送駆動のATP合成活性の測定の結果、A214C, G215C, A218C, K219C, I223CとN230CにおいてNEM修飾によるATP合成活性阻害がみられた。また、A214C, G215C, A218C,I223C, N230CにおいてNEM修飾によるATP加水分解阻害が見られた。 K219CをNEMで修飾したものは合成で阻害するが、加水分解では阻害しないことを確かめるために、ATP加水分解駆動のプロトン輸送活性、プロトン輸送駆動のATP合成活性への影響についても分析した。その結果、A214C, G215C, A218CとN230Cは、NEM修飾でATP合成活性、ATP駆動のプロトン輸送活性のいずれも阻害されたが、K219CはATP合成活性のみ阻害した。 これらの結果から、ナトリウムイオン輸送型ATP合成酵素は、プロトン輸送型ATP合成酵素と同様にaサブユニットに2本のハーフチャネルを形成していること、K219はATP合成時のみイオンチャネルとして働くことが示唆された。
|