研究概要 |
本研究課題は、糖鎖を形作る糖転移酵素の遺伝子発現制御機構を明らかにすることである。各々の糖転移酵素は組織特異的に発現しているが、その詳細な機構はほとんど分かっていない。本研究では特に、脳特異的に発現している糖転移酵素GnT-IXに着目し、その発現制御機構の解明を目指している。 昨年度までの成果により、GnT-IX遺伝子の発現が脳特異的な転写因子であるNeuroD1のプロモーター領域への結合により制御されていること、またその結合はGnT-IX遺伝子領域のエピジェネティックなヒストン修飾(クロマチン修飾)によって制御されていることを明らかにしている。しかしこのヒストン修飾がどのように調節されているのかは分かっていない。 平成24年度は、このヒストン修飾のメカニズムを明らかにすること、また他の類似した糖転移酵素遺伝子の制御機構を明らかにすること、この2点を目的に研究を行った。その結果、GnT-IX遺伝子周辺のヒストンを抑制的に修飾する因子としてHDAC11が、逆にヒストンを活性化する因子としてO-GlcNAc transferaseとTET3の複合体を新たに見出した。また類似する糖転移酵素として、GnT-III, V, Fut8の3種の遺伝子の解析を試みたが、新たに見出したメカニズムはGnT-IX遺伝子に特異的なものであることがわかった。 以上の結果から各糖転移酵素遺伝子は異なるメカニズムによって制御されており、特に脳特異的なGnT-IXでは、エピジェネティックな制御を受けやすいことがわかった。
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