本研究では、細胞骨格上に発生する「歪」と「流れ」の空間変化を測定する手法の開発を目指す。蛍光タンパク質タグを付した細胞骨格タンパク質を細胞内に発現させて、ライブセルイメージングを行う。得られた画像を数値解析することで、「歪」と「流れ」の物理量を抽出する。細胞骨格上に発生した「歪」と「流れ」を評価するための数値解析プログラムを作成した。蛍光タグ付き細胞骨格タンパク質を生きた細胞内に導入すると繊維構造の時空間変化をとらえることが可能である。そこで、繊維構造に沿った曲線を数値計算で定義し、曲線上の蛍光輝度プロファイルから繊維の変形を評価するプログラムを作成した。次に細胞骨格のライブイメージングをおこなうために、細胞骨格タンパク質のクローニングを行った。アクチン(アクチン繊維)、ビメンチン(中間径フィラメント)、チューブリン(微小管)、それぞれに蛍光タンパク質を融合させることで、生きた細胞内で細胞骨格タンパク質の動態を観察することが可能な実験系を構築した。数値解析プログラムと融合蛍光タンパク質を用いて、薬剤投与によって特定の細胞骨格を破壊した際における、他の細胞骨格の動態変化を測定した。まず、アクチン繊維を破壊させたときにおける中間径フィラメントに発生した「歪」と「流れ」を評価した。アクチン繊維の崩壊とともに「流れ」、「歪」ともに上昇すること、「流れ」についてはその後減少してゆくことを見出した。これらの結果は、細胞内でアクチン繊維と中間径フィラメントが力学的に相互作用していることを示唆している。
|