研究課題/領域番号 |
23770168
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
新井 由之 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (20444515)
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キーワード | 1分子蛍光観察 / 金属増強 / 蛍光タンパク質 / ImageJ |
研究概要 |
本研究の目的は、蛍光プローブ近傍にナノメートルサイズの金属微粒子が存在した際、局在プラズモン効果による蛍光プローブの励起速度の上昇・蛍光寿命の減少による蛍光シグナル強度の増強効果及び蛍光褪色への高耐性効果を利用することにより、1分子蛍光観察を長時間・安定して計測するシステムを開発することである。 これまでに、アミノシラン処理したガラス表面上に均一・高密度ナノサイズ金粒子を固定化したガラス基板を作成し、さらにその金粒子を核として銀粒子をコーティングしたナノサイズ金属粒子によりコーティングされたガラス基板を作成した。作成したガラス基板上において、生きたHeLa細胞上に結合した、蛍光標識した上皮成長因子EGF1分子の蛍光輝点の観察に成功した。 一方、計測した1分子蛍光輝点を自動検出するソフトウェアとして開発した、ImageJベースのプラグインPTA(Particle Track and Analysis)の改良を行い、①真円のみならず楕円形の蛍光輝点の検出、②コードの最適化による処理速度の向上を行うことができた。特に①に関しては、分光した1分子蛍光多輝点の自動検出・追跡に成功した。 1分子蛍光輝点測定では、安定した励起光強度やステージの顕微鏡システムの確立が必要である。そこで、機器制御プログラミングシステムLabViewをベースに用いた、カメラ・光源の高速制御可能な顕微鏡システム制御を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初研究計画において、作成した金属コートガラス基板と構築した顕微鏡システムを用いることで、細胞膜上および直下での蛍光4色同時観察を行う予定であったが、現在同時蛍光2色までにとどまっている。これは、申請者の所属する研究室の移動に伴う、顕微鏡システムおよび付随設備の再構築が必要であった影響が大きいことと、金属プローブ自体から発する光が背景光となる問題の解決に時間を要しているためである。 研究期間を延長することでこれら問題点を解決し、研究目標達成に全力を尽くす。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に続き、蛍光強度の金属による増強効果を利用した蛍光多色観察システムの開発を行う。4色同時計測には、多色励起光および多色による分光が必要であるため、これを実現する光学系を構築する。また、金属プローブ自体からの、励起光に伴う発光現象も多色同時観察を妨げる要因となっている。これは、金属粒子の大きさと正の相関関係があることが明らかとなっている。従って、金属増強効果は低減するが、金属粒子のサイズを小さくすることで、金属プローブからの発光現象を抑制する。 また、金属増強効果は蛍光プローブのみならず、化学発光プローブに対しても有用である可能性がある。そのため、化学発光プローブに対して増強効果の影響の検証も行う。これにより、励起光を要しない蛍光観察が可能となることが期待される。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究に遅れが生じており、本年度実施予定であった実験の一部および成果発表を、研究期間を延長し、来年度実施することとした。 そのため、その経費として見込んでいた平成24年度の研究費に未使用額が生じた。よって、未使用額は今後の研究の推進方策に則り、実験及び成果発表の経費に充てることとする。
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