研究概要 |
クラミドモナスを三次元空間で追尾しながら、同時に鞭毛の動きを安定に観察することが可能となった。一次データとして得られる1/1,000 秒ごとのクラミドモナスの位置(x,y,z)情報と画像に対して、統計処理ソフトウェア R 及びMatlabを利用した数値・画像解析により、1 回の鞭毛打で進む距離、x,y,z 方向への瞬間的な速度、曲率、クラミドモナスの回転とその周期、三次元空間における泳動軌跡を容易に計算できるシステムを作成した。これを用いて、野生株、既存のダイニン変異株の鞭毛運動の数量データを得た。 Molnar et al. 2007によって報告された人工マイクロRNA法(amiRNA法)が、クラミドモナス鞭毛構成遺伝子についても適用できるかを検討した。ダイニン軽鎖遺伝子をamiRNA法によってノックダウンした株を作成し、トラッキング顕微鏡にて鞭毛運動を観察したところ、既知の報告と同様な表現型が観察された。また機能未知の鞭毛遺伝子についてamiRNAによるノックダウンを行ったところ、2本の鞭毛運動の協調が損なわれた表現型を持つ株が単離できた。このことから、amiRNA法は鞭毛遺伝子のノックダウンとその機能解析に有効であることが示唆された。 また、クラミドモナスの細胞壁の有無は鞭毛運動に影響を与えるため、細胞壁を持つ株を研究に利用することが必要である。しかしこれまでは、細胞壁があるクラミドモナス株を形質転換するためには、ガメトライシンを用いて細胞壁を融解させる必要があるため、時間と手間がかかっていた。そこで細胞壁を有する株を簡便に形質転換するために、NEPAGENE社のエレクトロポレーターの条件を検討し、細胞壁がある株に直接エレクトロポレーションする場合でも、形質転換効率0.025%で薬剤耐性株が得られる系を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
三次元トラッキング顕微鏡の一次データとして得られる1/1,000 秒ごとのクラミドモナスの位置(x,y,z)情報と画像に対して、定量的に解析できるプラットフォームを作成できたため。 細胞壁を持つクラミドモナスに関してエレクトロポレーションにより簡便に形質転換できる系を確立し、また鞭毛遺伝子のノックダウン解析とトラッキング顕微鏡の観察を組み合わせた方法が、鞭毛運動の協調が損なわれた新奇な変異株の単離に有効であることが示されたため。
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