研究課題/領域番号 |
23770174
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
千見寺 浄慈 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10420366)
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キーワード | タンパク質 / 立体構造予測 / 非局所的相互作用 / フラグメントアセンブリ法 / 構造アラインメント |
研究概要 |
新しい第一原理的タンパク質立体構造予測法の開発に向けて、基礎となる手法開発と解析を行った。 まず、昨年度から開発してきた配列順序に依存しない構造アラインメント手法の改良拡張と、これを用いた配列順序を無視した構造テンプレートの有用性を検討した。配列順序に依存しない構造アラインメント手法は、アラインメントする際に側鎖の効果を取り入れることと、構造類似スコアを改良することで、飛躍的に性能が向上した。また、この手法は、もともとは配列順序に依存しない構造類似性を検知するために開発されたものであるが、わずかな変更点のみで、配列順序を保持した通常の構造アラインメント法に変更できることがわかった。さらに、この方法は、現在最も信頼されている構造アラインメントのプログラムであるDaliLiteよりも、統計的に有意な差で、マニュアルアラインメントを再現する能力が優れていることが明らかとなった。これらの手法を用いて、配列順序に依存しない構造をテンプレートとして用いた場合、異なるフォールドのタンパク質構造同士を比べても、約80%は類似構造を持つことがわかった。このことは、配列順序に依存しない構造をテンプレートとして利用することの有用性を示している。また、改良されたアラインメント手法を用いて、進化的関連性はないが構造類似性を示すタンパク質ペアの特徴を調べた。その結果、疎水親水のパターンも大きく破られており、タンパク質のサイズも大きく異なっていること等が確認された。 上記解析等から得られた見地に基づき、新規フォールド構造を予測するために、既存フォールド構造の二次構造の順序をつなぎ替えることによる予測構造候補を生成する方法を開発した。現在までのところ、約100残基以下の任意のタンパク質構造に関しては、既存フォールド構造の二次構造のつなぎ替えにより、極めて類似した構造を出力出来る段階まで到達した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度から引き続き開発を行なっている配列順序に依存しない構造アラインメント法に関しては、改良の結果、マニュアルアラインメントを再現できるという観点で、既存のどの構造アラインメントアルゴリズムよりも、統計的有意差を持って優れているものを開発することができた。また、当初は予想していなかったが、配列順序を保持した構造アラインメントとしても、さらには、複合体の構造比較としても優れたアルゴリズムに拡張することができた。このように、構造アラインメント手法の開発は、当初目標よりも遥かに高い水準に達することができた。 構造アラインメント手法の制度が飛躍的に向上した結果、網羅的構造比較の結果が、改良前と比べて質的に異なってきた。その結果、構造予測手法の開発予定に若干の再考が必要となった。例えば、改良された構造アラインメント手法を用いた構造比較により、新規フォールドのテンプレート構造として、配列順序を入れ替えた既知構造を使うことの有用性が、以前考えられていたよりも大きいことが明らかとなった。したがって、二次構造パッキングを変化される構造生成法よりも、既知構造の配列順序を変えることによって構造を生成した方が効率的に構造予測手法を開発できると判断し、この方向性にシフトした。現在までに、100残基以下のタンパク質であれば、既知構造の配列順序を変えることによって、効率的に天然構造に類似した構造を生成する手法を開発できた。このように、若干の予定変更はあったものの、より効率的な方向に研究の方向性をシフトでき、かつ、限定的ではあるが、手法開発も進んでいることから、構造予測手法開発の方も、おおむね順調に進んでいると言える。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の成果に基づき、新規フォールド構造に対する立体構造予測手法の開発を行う。 まず、100残基を越える比較的大きなタンパク質を対象にして、新規フォールド構造であっても、天然構造に近い構造を、既知構造のつなぎかえにより高効率で生成する手法を開発する。この際、既知構造のつなぎかえ方の場合の数は膨大な数になってしまうので、予測構造として妥当でないものを、この時点で除外することが重要である。このために、つなぎ変えた構造がコンパクトかどうかや、鎖のつながり方はタンパク質として自然なものか、といった基準を作成しフィルタリングする手法を開発する。コンパクトかどうかは二次構造要素をグラフとみなして連結グラフになっているかを判断するアルゴリズムを作成する。鎖のつながり方は、データベースから経験則を抽出し、妥当なコネクティビィーを満たしているかを判断するアルゴリズムを作成する。 次に、多数発生させた構造の中から、どの構造が妥当であるかを選択する手法を開発する。改良された構造アラインメント手法を用いて網羅的に構造比較を行い、そのアラインメントに基づき、進化的には関係がないが、二次構造パッキングの様式が異なるタンパク質ペアにおける特徴を理解し、スコア関数に取り入れる。 開発した手法を統合した立体構造予測手法を開発し、大規模ベンチマークテストを行い、性能評価を批判的に検証する。
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次年度の研究費の使用計画 |
H24年度の計画では通年を通してリサーチアシスタントを雇用し、研究を遂行する計画であった。予定通り、プロジェクトの適任者を雇用したが、リサーチアシスタントが担当すべき業務が順調に進み一区切りついたため、また、そのリサーチアシスタントが研究員として年度途中に他機関に就職したため、年度途中でこの雇用は中断し、その結果繰越金が発生した。 本年度は、当初予定通り、データのバックアップのためのハードディスク等を購入や、成果発表のための旅費等を計上している。H24年度の繰越金は、論文投稿料等に利用し、積極的に成果を発表する。
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