研究課題/領域番号 |
23770174
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
千見寺 浄慈 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10420366)
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キーワード | 立体構造予測 / 二次構造パッキング / ループクロス / 新規フォールド構造 |
研究概要 |
フラグメントアセンブリ法の逆発想による新規フォールド予測法の開発と、その方法論の基盤となるデータベース解析を行った。 データベース解析に関しては、 昨年度までに開発してきた配列順序を無視した構造アラインメント手法を用いてタンパク質立体構造データベースの詳細な解析を行ったところ、トポロジーは異なるが同一パッキングをもつタンパク質ペアの多くは、空間的に対応する二次構造の鎖の方向(N末端からC末端への方向)が反対向きのこのが多い、ということが明らかとなった。このことは、既知の立体構造の二次構造のつなぎかえにより新規フォールド構造を生成する際に、二次構造の向きを逆向きにすることの重要性を示している。 平成24年度までの解析結果、および上記の結果に基づき、新規フォールド構造を予測するために、既知フォールド構造の二次構造のつなぎかえによる予測構造生成手法の開発・改良を行った。具体的な手法は、まず、予測したい配列(ターゲット)の二次構造予測を行い、その二次構造と数とマッチする既知フォールド構造を特定し、その構造の二次構造の順番をターゲットの二次構造予測の配列順序と同じになるように再配線することで構造を生成する、というものを開発した。この際、二次構造の鎖の向きを元々の向きと反対の向き両方を考慮した。この手法の問題点は、生成する構造の数が膨大になってしまうことである。これまで、物理的に妥当でない構造をフィルタリングするために、ループ構造の統計データを用いたフィルタリングや、ループクロスを検出してフィルタリングを開発し、実装した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、構造予測手法の理論的基盤をなす構造データベースの統計解析の結果に基づき、より優れた方法を目指すため、構造予測手法の開発の方向性を変更することとなった。今年度はこの方針に従い、立体構造予測手法の開発を行なってきたが、ループクロスの判定アルゴリズム、連結グラフを用いた構造のコンパクトさの判定など、この方向性を進める上で新たに開発すべき手法が複数必要となってきた。これらを開発し、立体構造予測手法に統合するところまでは到達したが、十分なベンチマークテストができておらず、未だに改良の余地が大きく残されている。また、関連する研究の論文も投稿中のものや準備中のものがある。以上のことから、現在までの達成度はやや遅れていると結論した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の成果に基づき、予測手法の開発改良を行う。特に、既知構造の再配線による新規フォールド構造の予測において、ループクロス判定など、新しい手法を統合してきたが、それらを用いて実際の構造予測を大規模に行い、現時点での問題点を批判的に検証し、さらなる改良を目指す。世界的規模で行われる蛋白質の立体構造予測コンテストCASP11に参加することで、他グループと比較した時の長所や短所を明らかにし、今後の改良に役立てる。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究計画の方針の変更に伴い、立体構造予測手法の開発に遅れが生じた。このため、平成25年度内に論文などの成果発表に至らなかった。本課題の研究成果発表は、本助成金を用いるのが望ましいと考え、成果発表に必要な金額を次年度繰越金とした。 本研究の成果を学会発表や論文として発表するため、学会発表のための旅費、論文投稿料として使用する。
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