研究課題
DNAには単一の立体構造をとっておらず、空間的かつ時間的な構造の揺らぎが存在している。この構造揺らぎはDNAが構造的、機能的な多様性を持つために必要不可欠な特性であり、遺伝や発現などDNAの関わる生命現象を明らかにするためには、この構造揺らぎのメカニズムを明らかにしなければならない。しかしながら、DNAの構造揺らぎにはDNAを取り囲んでいる水分子を始めとした溶媒分子が複雑に関係しており、構造揺らぎをDNA単体でなくDNA周辺の水和層を含んだ複合的な解析が求められる。本研究では、中性子解析を主眼にして、水和構造を含めたDNAの構造揺らぎを明らかにすることを目的にした。本研究は3つパートから校正されている。(1)高品質な実験試料の作成、(2)中性子実験と、(3)立体構造解析である。以下その結果を列挙する。(1) 高品質な実験試料の作成:DNAの重水素化は合成の手順は昨年度に確認したが、本年度で結晶化に必要な大量合成と精製までは至らなかった。一方、中性子解析に必要な大型結晶の作成は成功した。(2) 中性子実験: 昨年度、室温でのH2O結晶について予備測定を行い、本年度は結晶の加工や測定温度を変更しての中性子実験を予定していた。J-PARCの中性子回折計iBIXの実験が予約されていたが、J-PARCのビームタイムが短縮されたために、実験が26年度にシフトしてしまい実験は実施できなかった。そこで、昨年度の実験データを用いて画像解析処理を試み、中性子回折像の特性などの検討を行った。(3) 立体構造解析: D2O-H2Oコントラストの解析については、蛋白質結晶を用いた中性子データを用いて解析アルゴリズムの構築を進めた。DNAの結晶構造については、中性子実験を予定している結晶のX線データを解析することにより、水分子とリンクしたDNAの構造揺らぎを明らかにすることに成功した。
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Journal of Synchrotron Radiation
巻: 20 ページ: 958-961
10.1107/S0909049513020815.
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