研究課題/領域番号 |
23770179
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
藤井 高志 大阪大学, 生命機能研究科, 特任研究員 (10582611)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 低温電子顕微鏡法 / ミオシン / アクチン |
研究概要 |
筋収縮時、ミオシンIIはATP加水分解反応エネルギーを利用して、アクチン繊維と相互作用し滑り運動を生み出す。ミオシンIIは重鎖と2種類の軽鎖からなる細長いタンパク質複合体である。重鎖はオタマジャクシのような形のN末端側の頭部とC末端側に伸びる繊維状の尾部に分けられる。ATP結合部位およびモータードメインは頭部にある。またヌクレオチド結合状態の違いによりミオシン頭部のアクチン繊維への結合状態が大きく異なり、Apo状態では強く、ADP状態では弱く結合し、その結合定数は約10倍異なる。この結合状態の違いは、ヌクレオチド結合状態にカップルしたミオシン頭部の構造の違いを反映していると考えられる。このような生化学的データと構造の連関を解明するために、低温電子顕微鏡を用いてアクチン繊維-ミオシンII頭部複合体の高分解能構造解析をおこなった。当初、ミオシンS1フラグメントをアクチン繊維に安定的に結合させることが非常に難しく画像収集の歩留まりが悪かった。グリッド作成条件を幅広く変えることによって、安定的に結合させる条件を見つけることができた。その結果、αヘリックスやβシートの解像が可能な~7オングストローム分解能で三次元再構成に成功した。これにより、従来信じられてきた相互作用様式とは異なる結合・非結合様式を見いだした。現在、さらなる高分解能化にむけて、さらに画像データを収集中である。また、画像解析法の工夫を行い、より精度の高い解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
アクチンとミオシンを安定的に結合させることが困難であったが、膨大な条件検討により、安定的に結合させる条件を見いだした。これにより現在のところ当初の計画以上に進展している。また画像切り出し自動化プログラムの作成により効率よくデータを増やすことに成功しており、これにより高分解能化もより進展した。
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今後の研究の推進方策 |
現在、電子顕微鏡像の撮影は手動で行なっているが、まずこれを自動化するプログラムを開発する。 また、撮影した画像から解析に使う繊維像の切り出しも手動で行なってきたが、これは今年度、自動的に行なえるソフトウェアを作成した。電子顕微鏡の撮影自動化により、500万分子像に相当する画像データの収集・解析を行いアクチン繊維-ミオシンII 頭部フラグメント複合体をアミノ酸側鎖が解像可能な3 オングストローム分解能で可視化を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
画像解析・プログラム作成用の高性能コンピューターを購入する。低温電子顕微鏡用の消耗品および、生化学試薬をそれぞれ購入する。また、現在急速に発展している低温電子顕微鏡法及び画像解析法の最先端の情報を得るために、国内外の学会やワークショップに参加するための予算を確保する。論文発表用の予算を確保する。
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