研究課題
筋収縮ではアクチン繊維とミオシンの結合が重要な役割を果たすが、結合状態の高分解能構造が得られていなかった。アクトミオシンの力発生のメカニズムの完全解明を行うためには、この複合体の構造を原子レベルの分解能で解明することが必須である。アクチン繊維・ミオシンII頭部複合体を低温電顕単粒子解析法で約7 Å 分解能で解析した。アクチン・ミオシン間の3次元立体配置が明らかになった。これにより相互作用様式が高い精度で明らかになった。アクチン・ミオシン間の結合様式は、疎水性パッチ間の結合をとりまくように静電相互作用が存在しており、親水性の静電相互作用をきっかけとして、疎水性相互作用により強力に結合すると考えられる。また、ミオシンのダイナミックな構造変化が明らかになった。結合状態構造をシミュレートしていると考えられていたX線結晶構造とその構造はおおまかには合っていたが、アクチン繊維との結合をしていないX線結晶構造はよりコンパクトな構造をしており、CryoEM構造ではよりドメイン間の距離があり、その空隙は大きなものであった。これはX線結晶構造がアクチンと結合したものではなく、結晶の影響を大きく受けているためと考えられる。また、ミオシンIIサブフラグメントの尾部の電子顕微鏡密度は二股に分かれており、2状態を取っていると考えられる。これはヌクレオチド状態がApo状態にもかかわらず、ブラウン運度により準安定状態の2状態を行き来していることを示している。同じApo状態にも関わらず、レバーアームの角度が異なる2種類の結晶構造が知られており、これが単なる結晶によるアーチファクトではないことが示唆される。また、この共存する2つの準安定状態は、熱運動がミオシンの力発生に大きな役割を担っていることを示唆している。
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Science
巻: 338 ページ: 1334-1337
Proc. Natl. Acad. Sci. USA.
巻: 109(12) ページ: 4461-4466