細菌べん毛モーターは,人工の回転モーターと同様に回転子と固定子から構成される.モーター固定子はイオンチャネルとしても機能するため,細胞膜を介した電気化学的勾配にしたがってイオンを流入させる.このイオン流にともない固定子の細胞質部位が構造変化して回転子と相互作用することで回転トルクを発生すると考えられている.本研究では,モーターがトルクを発生している細胞内部位を蛍光標識して,モーター本体の回転を直接的に検出する基盤技術の開発を目指した. 平成24年度は,昨年度に引き続いての観察系システムの改良,テトラシステインタグを介して固定子MotBを蛍光染色する新規手法の開発,回転子・固定子の二重染色を中心におこなった.まず,計測システムの評価として,顕微鏡自体の安定性がx-y方向に1~2 nm程度のノイズレベルで構築できていることを確認した.次に,テトラシステイン(TC)モチーフ Cys-Cys-Pro-Gly-Cys-Cys を含むようにMotBとの融合タンパク質を構築したところ,従来モーターの蛍光観察に利用されてきたGFP-MotBよりも良く機能を保持していることを確認できた.TCタグには1分子追跡も可能であるReAsHが特異的に結合して発色することが知られており,現在1分子観察するために最適な染色条件を検討している.また,回転子FliGと固定子MotBをGFPやmCherryなどの蛍光タンパク質とをさまざまな組み合わせで融合タンパク質を作成してモーターの機能を評価し,モーター固定子・回転子の同時観察に最適な系を見出した.
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