研究課題/領域番号 |
23770194
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設) |
研究代表者 |
真壁 幸樹 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(共通施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 助教 (20508072)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 構造揺らぎ / 蛋白質 |
研究概要 |
本研究の目的はGroEL/ES複合体の構造揺らぎを水素・重水素交換反応によって明らかにすることであり、このために、蛋白質ライゲーションと溶媒クエンチNMR法を融合したアプローチを用いる。 本年度はGroESの構造揺らぎを明らかにするために、溶媒クエンチNMR法を用いて構造揺らぎの測定を行った。窒素15で同位体標識されたGroESを大量に大腸菌から組換え蛋白質として調整し、高い純度で精製を行った。IPTGによる誘導のタイミングと集菌するまでの培養時間を検討することで高い培養収率が得られるようになった。 炭素13-窒素15同位体標識されたGroESを用いてDMSO溶液中でのアサイメントを完了させた。このアサイメントに基づいて各残基の重水素交換速度を測定した。はじめの測定では良好な実験データが得られなかったが、溶媒交換カラムへのサンプル添加量を調整することで安定した測定結果が得られるようになった。DMSO溶媒への置換後にわずかに残った水分が測定結果に悪影響をもたらしていたと考えられる。以前に測定したTROSY-NMR法による水素・重水素交換反応の解析を行い、今回の溶媒クエンチNMR法での交換速度測定の結果と比較した。結果、両方の測定結果は良好に一致していた。また、TROSY-NMR法では測定できなかった交換速度の速い領域(交換時間2時間以内)についても、溶媒クエンチNMR法では交換速度を決定することが出来た。構造上、GroELとの結合界面に存在するモバイルループ領域の構造揺らぎが大きいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
GroESの構造揺らぎの測定を溶媒クエンチNMR法によって順調に決定することが出来た。これは引き続き行うGroELの測定に向けて重要な基盤となる。溶媒クエンチ法についての実験方法が確立されたので、同様の実験条件を用いることでGroELの測定も順調に行うことが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
GroESの構造揺らぎ測定に関して良好な実験データを得ることが出来たので、GroESの構造揺らぎ測定の完了と論文作成を目指す。GroESを用いた溶媒クエンチNMR法を繰り返し測定し、信頼できるプロテクションファクターの値を求める。 GroELに関して窒素15ラベルした蛋白質の調整を行い、培養条件の検討を行う。GroELは大きな蛋白質であるため、そのまま溶媒クエンチNMR法が適用できないと考えられ、蛋白質ライゲーションとの組み合わせを検討する必要がある。まず、窒素15で安定同位体標識されたGroEL全長をDMSO中でNMR測定を行い、スペクトルを検討する。このままではGroELのアサイメントは困難であるが、重水素交換反応の予備的な測定を行うことが出来るため、実際に重水素交換反応の測定をGroESと同様な方法で行って、交換反応の起こる速度範囲を測定し、実験条件を決める。 GroELの部位特異的ラベリングを行うために蛋白質ライゲーション反応を行う。このためにインテイン融合ベクターを遺伝子工学的手法によって構築する。インテイン融合ベクターはIwaiらが構築したスプリットインテイン発現ベクター(pSKDUet01, pSKBAD2)をAddgeneから入手済みで有り、それらを用いる。培養方法を検討し良好にライゲーション反応が起こる条件を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度はGroESおよびGroELの窒素15ラベル変異体を大量に調整する予定である。このため窒素15で標識してある塩化アンモニウムなどのラベリング試薬を購入する(約20万円)。また、作製した蛋白質類を保存するための超低温フリーザーを購入する(約60万円)。この他に遺伝子工学によって発現ベクターを構築するための制限酵素類や試薬類、消耗品であるプラスチックチップ等を購入する(合わせて約10万円)。研究成果を国内学会で発表するための旅費も計上する(約10万円)。
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