研究課題
近年、医療応用の観点から哺乳類ミトコンドリア蛋白質合成系の分子機構の詳細を分子レベルで解明する必要性が高まっている。本研究課題では当該年度までに以下の成果を得た。[1] リボソーム再生機構の解明:申請者が発見した翻訳因子EF-G2mtの作用機序を解析した。EF-G2mtはRRF1mtと協同的にリボソーム解離反応を促進すること、ミトコンドリアRRF1mtはユニークなN末付加配列(NTE)を有しており、このNTEによりEF-G2mtのGTP加水分解非依存的にリボソーム解離反応が促進されることを明らかとした。またEF-G2mtのGTP加水分解は、リボソーム解離反応後にRRF1mtとEF-G2mtがリボソームサブユニットから解離するために必要となる。バクテリアRRFはEF-GによるGTP加水分解依存的にリボソーム解離反応を促進することが知られており、これまでリボソーム再生過程におけるEF-GによるGTP加水分解の役割は不明であった。EF-GのGTP加水分解には①リボソーム解離反応の促進、②因子のリボソームサブユニットからの解離、の2つの側面があり、RRF1mtのNTEにより①の役割が不要になることが明らかとなった。[2] 55Sリボソームの構造解析:ミトコンドリア55Sリボソームの調製方法を独自に確立してcryoEMによる構造解析を進めた。55Sリボソーム上のE-site tRNAの可視化に成功し、55SリボソームにはE-siteが存在しないという他グループによる先行報告を修正することができた。[3] 哺乳類ミトコンドリアリボソームの生合成因子の機能解析:55Sリボソームの調製方法が確立されたため、生合成因子(RsfAmt, ObgH1, Mtg1)の生化学的な機能解析を進め、特にリボソームへの結合様式について知見を得た。
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DOI:10.1093/nar/gkt079
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