研究課題/領域番号 |
23770204
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
韓 龍雲 京都大学, 物質―細胞統合システム拠点, 助教 (50566297)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 一分子解析 / DNAヘリケース |
研究概要 |
高精度で蛋白質やDNAの動きを計測、制御できる一分子計測技術を用いて、大腸菌のDNAヘリケースの機能解析を行っている。具体的には個々のDNAヘリケースがATP一分子の加水分解で何bpのDNAをほどくのか?二本鎖DNAに正または負のスーパーコイルを導入する事で、それぞれのDNAヘリケースがどのように振る舞うのか?等のこれまでの解析では困難であった個々のDNAヘリケースのダイナミックな動きを解析する事が本研究の目的である。解析方法として、ガラス基板に蛍光標識された二本鎖DNAを固定し、二本鎖DNAの巻き戻しに伴うDNAの解離を観察すること、またはガラス基板に固定されたDNAの他端に蛍光標識された磁気ビーズを結合させることで、DNAの解離に伴うDNAの回転を蛍光標識磁気ビーズの回転として観察することでDNAヘリケースの機能解析を行っている。単量体または二量体で機能する大腸菌RecQまたはUvrDヘリケースについては蛍光標識された蛋白質の作製に成功し、ガラス基板上でDNAをほどく様子も観察できた。また、UvrDヘリケースについては蛍光標識されたATPを利用して、DNAをほどく事ができる事も確認できた。六量体リング構造で二本鎖DNAに結合する大腸菌RuvB蛋白質についても蛍光標識された蛋白質の作製に成功した。まだ、ステップサイズについての解析まで進展していないが、二本鎖DNA上での六量体形成過程を議論できるような結果がいくつか得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初はDNAヘリケースによるDNAをほどく過程を観察するのは2年目の研究計画であったが、計画より、早くDNAヘリケースの機能解析が進んでいる。単量体や二量体で機能する大腸菌RecQやUvrDヘリケースでは、蛍光標識RecQやUvrDの作製に成功し、その動きを蛍光標識DNAと共に同時観察することで解析する系を確立する事ができた。また、UvrDでは蛍光標識ATPを利用して、二本鎖DNAをほどく事が確認でき、UvrDのステップサイズを測定するだけでなく、UvrDがATPを結合してから、加水分解し、その後ADPの解離までの間にUvrDはどのような挙動を示すのかを明らかにする事が大いに期待できる。また、六量体で機能する大腸菌RuvBについても蛍光標識RuvBの作製に成功した。こちらは現在、RuvBの六量体形成過程を解析している。
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今後の研究の推進方策 |
UvrDが現在、蛍光標識ATPを加水分解して、二本鎖DNAをほどくと言う事を明らかにできたので、それを直接観察する事が今後の研究の推進方策の一つである。研究は研究計画で計画したようにそれぞれの蛍光分子を光学顕微鏡で観察する予定である。また、RuvBも現在、蛍光標識RuvBを用いる事でRuvB多量体の様子を観察できるようになったので、UvrDと同様に光学顕微鏡上でのどのようにして二本鎖DNA上で六量体を形成するのかをATPや加水分解できないATPアナログであるATPγSそして加水分解されたADP等を用いて、RuvBのDNA上での複合体の状況を観察する事がもう一つの今後の研究の推進方策だと考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
現在は継続して蛍光標識蛋白質、DNAやATPの観察を行っていて、その作製に必要な試薬、そして、それらを光学顕微鏡上で観察するための石英ガラスの購入が次年度の研究費の主たるものとなる。また、今回の研究の結果、現在論文を投稿中で、次年度ではこの論文の雑誌への掲載料にも使用する予定である。そして、そのような研究結果を発表するために国内および海外の学会にも参加し、発表する予定であり、そのためにも研究費を使用する予定である。
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