研究課題
生物は様々な環境変化に対するストレス応答機構を備えているが、最も身近なストレスである飢餓状態ですら、その応答のメカニズムは解明されていない。グラム陰性菌、陽性菌共に、飢餓的ストレスに曝されると、70Sリボソームが2量体化した100Sリボソームを形成し、タンパク質の合成を抑制する。しかし、100Sリボソームがどのようにしてタンパク質合成を抑制しているのか、70S同士はどのように結合しているのかなど、多くのことが明らかにされていない。そこで、ストレス応答時の100Sリボソーム形成とタンパク質合成抑制のメカニズムを明らかにするために、それぞれのリボソームを単離精製し、低温電子顕微鏡を用いた構造解析を行った。大腸菌(グラム陰性)の100Sリボソームはお互いの30Sのもっとも突き出たS2タンパク質が、相手側のS3、S4、S5が形成するポケットにはまり込むようにして結合していた。S3、S4、S5によって形成されるポケットはmRNAの入り口であり、これは100Sリボソーム形成によってmRNAがリボソームに入って行くのを抑制することでタンパク質合成を抑制していることが明らかとなった。一方、黄色ブドウ球菌(グラム陽性)の場合、お互いの30Sを介して結合している点では大腸菌と同じだが、S2は結合に関与しておらず、互いのmRNAの出口を塞ぐような位置で結合していることが明らかとなった。これらの結合様式の違いは、100Sリボソーム形成因子であるHPFの違いによるものと仮説を立て、大腸菌HFPと類似のHPFを持つErvinia、黄色ブドウ球菌と類似のHPFを持つ乳酸菌を用いて同様の実験を行ったところ、Erviniaでは大腸菌と、乳酸菌では黄色ブドウ球菌と同様の結合をしていることが明らかとなり、この仮説が正しいことが証明された。
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Proc. Natl Acad. Sci. USA
巻: 109 ページ: 20643-20648
doi:10.1073/pnas.1215274109