申請者らの以前の研究で、KDM2A が血清・グルコース飢餓時にヒストン脱メチル化を介してリボソームRNA(rRNA)転写を抑制する事を明らかにした。しかし、詳細な分子機構は分かっていない。そこで、以前までの研究成果を発展させ、① 血清・グルコース中のどの培養成分がKDM2A の脱メチル化能を調節するのか。②KDM2A はどの様な分子機構でrRNA 転写抑制を起こすのか。これらを明らかにする目的で研究を開始した。 その結果、インスリン又はグルコースが、飢餓時に起こるKDM2A依存的なrRNA転写抑制、及びヒストンH3K36me1/2 脱メチル化を抑制できることが分かった。さらにrDNAプロモーターに結合しているKDM2Aを解析した所、プロモーター上で脱メチル化活性変化が生じると考えられた。この事は飢餓シグナルがrDNAプロモーター上のKDM2Aに伝達される事を示唆している。 次に、KDM2AによるrRNA転写抑制の分子機構を解析するため、KDM2Aの機能ドメイン変異体解析を行った。その結果、KDM2Aの機能ドメインの一つ、CXXCドメインが非メチル化CpG配列結合能を持ち、rDNAプロモーターにリクルートするのに必要であることが分かった。そして、rDNAプロモーターで起こる飢餓時のヒストン脱メチル化にはCXXCドメインが必要であることが明らかとなった。一方、Pol II遺伝子の一つで、CpG配列をもつP2RX4遺伝子にはKDM2AはCXXCドメイン依存的に結合するが、脱メチル化能発揮にCXXCドメインは必要でなかった。これら一連の結果はrDNAプロモーターと、他のRNAポリメラーゼII遺伝子クロマチンの違いを反映している可能性がある。現在は以上の結果の結果をまとめ国際学術誌に投稿後、リバイス中である。
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