研究課題
RNAサイレンシングは、小分子RNAが関与する塩基配列特異的な遺伝子発現制御機構であり、細胞の増殖、発生、分化といった種々の生命現象に関わる必須メカニズムである。本機構に関わる内在性小分子RNAの一つにendo-siRNAがある。endo-siRNAの前駆体は、核で転写され細胞質に輸送され成熟化すると考えられているが、そのメカニズムは不明である。siRNAの前駆体が、どのような配列・構造をもつRNAなのかを同定するために、siRNAのプロセシングに関与しているタンパク質(Loqs-PD)を用いて、共免疫沈降とノーザンブロットにより検出を行った。その結果、約40bpと約80bp付近にsiRNA前駆体と考えられるバンドが検出することが出来た。このことから、Loqs-PD複合体によって、siRNA前駆体がプロセスされることを明確に示した。さらに、これまで明らかになっていないendo-siRNA合成経路に関わる新規因子の探索を行った。ショウジョウバエのAgo2は、RNA切断活性を持っている。Ago2は2本鎖siRNAの片方鎖を切断することで、siRNAを合成している。この最終ステップである2本鎖siRNAを切断する前と後で、Ago2の複合体形成因子が異なると考えられている。そこで、pre-RISCを形成すると考えられるスライサー活性の無い変異体Ago2を用いて、WT-Ago2との結合因子の違いを共免疫沈降とショットガン分析により解析を行なった。その結果、2本鎖siRNAをもつAgo2にのみ結合していると考えられる新たなタンパク質を同定することが出来た。ショウジョウバエ培養細胞を用いて、このタンパク質をノックダウンするとmiRNAの量は変化しなかったが、明らかにendo-siRNAの量が増加した。この結果から、この因子がendo-siRNAの合成量を調節していると考えられる。
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