研究課題/領域番号 |
23770215
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北村 朗 北海道大学, 先端生命科学研究科(研究院), 助教 (10580152)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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キーワード | タンパク質凝集体 / 神経変性疾患 / RNA結合タンパク質 / タンパク質品質管理 / 神経細胞死 / 蛍光分光イメージング |
研究概要 |
筋委縮性側索硬化症 (Amyotrophic lateral sclerosis; ALS)の原因として,近年,TDP43 (TAR-DNA/RNA binding protein 43-kDa)タンパク質が注目されている.本研究では,TDP43タンパク質が細胞内のRNAを介して神経細胞毒性を発揮するメカニズムを明らかにする.具体的には,TDP43タンパク質またはそのC末断片が凝集し,他の機能性タンパク質や機能性RNAを巻き込むことで神経細胞死を引き起こす可能性と,TDP43の変異体が細胞内RNAメタボリズムに対し変化をもたらし,神経細胞死を引き起こす可能性について検証することで,ALSにおける神経細胞死の機構を詳細に解明することが目的である. 当該年度は,蛍光タンパク質融合型TDP43を発現させた培養神経細胞を破砕抽出し,蛍光相関分光法 (FCS) [Kitamura A. et al., Nat. Cell Biol. 10, 1163-1170 (2006)]を用いて,可溶化状態にある分子サイズを評価した.これにより,TDP43がオリゴマーを形成していることと,TDP43のC末断片であるTDP25では,可溶性の凝集体を形成していることを見出した.さらに,得られた細胞抽出液にDNaseまたはRNaseを作用させた後,FCS解析を行ったところ,TDP43では分子サイズの変化は見られなかったのに対し,TDP25ではRNase処理により凝集体形成が促進された. このことは, RNAがTDP25の構造を安定化し凝集を起こりにくくしていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画通りにTDP43の凝集形成過程を解析することができた.さらに,驚くべきことに,タンパク質の凝集体形成をRNA分子が抑制していることを見出した.このことは,従来,タンパク質凝集形成がポリペプチドの配列のみに依存して起こると考えられていたが,RNAがタンパク質の構造変化または分子間相互作用の制御を行っているという新たな知見を得られたことは大きい.
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今後の研究の推進方策 |
前年度の解析により明らかとなったTDP25と結合するRNA分子をIP後クローニングし,結合RNAライブラリーを構築する.このライブラリーの配列を次世代シーケンサー等により解析し,バイオインフォマティクス解析を行い,TDP25の凝集形成を抑制することができるRNAを同定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
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