研究課題/領域番号 |
23770222
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
湊元 幹太 三重大学, 工学(系)研究科(研究院), 講師 (80362359)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 人工細胞モデル / 巨大リポソーム / シグナル伝達 / 膜タンパク質再構成 / バキュロウイルス / GUV / 少数要素による構成実験 / 細胞情報 |
研究概要 |
膜タンパク質要素、脂質要素、細胞質要素を、人工ベシクル(細胞サイズリポソーム)に個別に組み込んだシステムを作製し、微小空間における最少要素からなるシグナル伝達経路での機能の発現を捉えることを試みた。Gタンパク質共役型受容体(GPCR)とその下流タンパク質群(促進性GTP結合タンパク質(Gαs)、アデニル酸シクラーゼ(ADCY))の遺伝子から個別に発現させた組換えタンパク質搭載のバキュロウイルス粒子と、リポソーム膜との同時膜融合により、個別に巨大リポソーム膜へ要素が組み込まれていることが、顕微鏡観察とウエスタンブロティングによりこれまでに確認できた。ただし、阻害剤、活性化リガンド、ホルモンなどが共存したプロテオリポソーム内部におけるcAMP産生について生化学アッセイによる検出を試みたところ、組み込まれた要素からなる経路でのシグナル伝達は認められたものの、強く有意にシグナルが流れたとまでは結論できなかった。そこで、機能発現に関わると考えられる、巨大リポソーム膜上での各要素間相互作用の条件検討が可能となるよう、蛍光タンパク質をC末端タグとして導入したGPCRを構築し、巨大リポソーム膜上への組み込んだプロテオリポソームを作製し、現在実験を進めている。また、この人工細胞モデル研究の進展に役立つよう、巨大リポソーム実験法への改良の試みにも取り組み、ゲル包埋型の巨大リポソームを作り、膜流動性などに瑕疵なく、酵素反応や膜動態の追跡などの実験に利用できることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組換えバキュロウイルスにより、シグナル伝達経路の要素を巨大リポソーム膜へ個別組み込みが可能であることが今回示された。一方、プロテオリポソーム内部でのcAMP産生の生化学アッセイは活性が示されたものの、強く有意なシグナルの流れとの結論に至っていない。当初、予定していた課題点が浮き彫りとなったので、要素間の相互作用について詳しく調べるべく、蛍光タンパク質を融合タグとしてもつ、上記の要素タンパク質セットを作出して、現在、人工細胞膜上での挙動を調べて機能発言の条件検討を行っているところである。また、アッセイ法を改善するため、より高効率でリポソーム内部に検出反応系を封入できる巨大リポソーム作製法の利用が可能であるかを、今年度新たに検討したため、その分進行や遅れた。しかし、これらの準備は順調に進められている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度課題を達成すべく、ADCYへ至るGPCR経路をなす最少要素を個別に組込んだ巨大リポソームを作製し、基底レベルの活性を生化学アッセイで捉えながら、同時に、蛍光基質などの検出用反応物を取りこぼすことなく封入可能な、界面通過(droplet trasfer)法を新たに採用して、シグナル伝達経路でのシグナルの流れを人工細胞レベルで可視的に検出する方法の開発に取り組む。当初の計画では次年度は、再構成を試みるシグナル伝達経路にGαqタンパク質を介するPLC経路を考慮していた。当初計画には無いが、ADCYの産生するcAMPで調節される有用な検出タンパク質として、cAMPによりゲートが開くチャネル(CNGA, CNGBなど)が利用可能と考えられる。これらの組換え遺伝子を組込んだウイルスの作出と人工細胞リポソームへの組み込みを進めていくことを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、備品等の購入は予定しない。主に、上述した実験の遂行に要する試薬類、器具類などの消耗品購入に支出し、一部を旅費、その他経費などに充てる予定である。
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