研究課題/領域番号 |
23770226
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
濱崎 万穂 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30455216)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | オートファジー / 小胞体 / ミトコンドリア / 電子顕微鏡 / トモグラフィー |
研究概要 |
オートファジーは、真核細胞が栄養飢餓状態に直面した際に誘導される細胞応答機構で、生存維持に必要な栄養源の確保に、オートファゴソーム(AP)が新規に形成され細胞質を非特異的に囲み分解する。APは常に存在しているわけではなく、オルガネラ形成が飢餓誘導で新規に行われる点は、他のオルガネラと比べ非常にユニークである。形成時の最大の疑問点は、新規に形成されるオルガネラの膜の由来である。近年、小胞体やミトコンドリア等の既存のオルガネラ膜の関与を示唆する報告がいくつかあり、活発に議論されるようになった。申請者はAP膜の由来の同定を目指し、AP膜形成機構の解明には不可欠は形態解析により研究を行っている。 APの直径は約1umあるが、初期形成サイトは小さく、光顕微鏡観察では解像度の限界があるため、電子顕微鏡を用いた観察は必須である。申請者は、ダイナミックな膜動態観察のため、電子線トモグラフィー法をとりいれ、3次元で解析を行うことで詳細な形成サイトの観察を行っている。今年度は、AP形成サイトの様な輝点で観察される限定された箇所を観察するために、渡独で習得した最新手法であるFM-EM相関法をとりいれた3次元解析システムを立ち上げた。初期過程に関与するタンパク質を指標にし、酵母細胞、動物細胞を用いAP膜初期形成サイトがどうなっているか、また既存のオルガネラとの関係はどうなっているか観察を行っている。APは形成後すぐリソソームと融合し分解が始まるため、形成過程に既存のオルガネラがどう関与するかを観察するために、形成が途中で止まる変異株を用い解析を行っている。光顕、電顕で共通してみられるのはAP膜に小胞体がかなり密接して存在し、またミトコンドリアも近傍にみられる頻度も高いことから、これらのオルガネラがAP膜形成に深く関わりがあることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
トモグラフィー対応の電子顕微鏡及び瞬時に固定が可能な高圧凍結機を含むサンプル調整機器の導入、又、電子顕微鏡室の立ち上げを一から行ったためかなりの時間を費やしたが、FM-EM相関法を立ち上げトモグラフィーで観察を行えたこと、またその間にどの細胞をどういう条件で観察するのがいいか条件検討も繰り返し行うことができた。実勢概要に示したように、既存のオルガネラ(小胞体やミトコンドリア)がAP膜に密接して存在することからこれらのオルガネラのAP膜形成への関与を示唆する結果となった。酵母細胞、動物細胞ともに多くのサンプルを観察中で概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
計画では、形成初期、形成中等より形成過程をより詳細に観察し、AP膜形成機構の解明を行う予定である。酵母細胞ではFM-EM相関法を用いることで、長年の謎である初期形成サイト(PAS)の構造解明を試みる。動物細胞では、AP膜形成への関与が示唆された小胞体およびミトコンドリアがどのように関与するか、小胞体ーミトコンドリアジャンクションサイトの関与の可能性も含め、AP膜形成途中の細胞を主に用い進める。又、小胞体/ミトコンドリア/オートファゴソーム形成因子などのマーカーを駆使することで既存オルガネラの関与の解明を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は当初の計画通り50万円の予算を、2年目に予定している実験遂行のために主に消耗品の購入にあてる。
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