・TORC1の基質の探求と活性制御機構。 通常、TORC1は富栄養状態で活性化され、枯渇時には不活性状態となる。研究代表者はヒトS6K1の分裂酵母ホモログであるPsk1およびSck1が栄養依存的にTORC1によるリン酸化制御を受けること、特にPsk1は、活性に関わる構造的に重要なモチーフのリン酸化がTORC1に直接制御されており、リボソームタンパク質S6のキナーゼとして働くことを見いだした。本成果は2012年12月に「Journal of Cell Science」に発表した。さらにTORC1の基質のリン酸化を解析することにより、長時間の栄養飢餓処理が、一度不活性化したTORC1を再度活性化させること、この再活性化はオートファジーの亢進に依存することが明らかとなった。栄養枯渇時のTORC1の再活性化は報告が少なく、TORC1の新しい生理機能の発見につながることが期待される。一方、TORC1の活性はラパマイシンにより阻害されるが、一部の基質はラパマイシンに耐性を示す。今回、オートファジーに関わる分子のリン酸化が、TORC1のラパマイシン耐性活性により制御されることを初めて明らかにした。ラパマイシン耐性のTORC1の生理機能が明らかになれば、新しいTOR阻害剤の開発に基礎的知見を提供できる。 ・アミノ酸の細胞内取り込みに関わる分子の同定。 アミノ酸を細胞内に取り込むトランスポーターは栄養状態により細胞膜への移送および局在が厳密に制御される。我々は塩基性アミノ酸トランスポーターCat1の局在制御に関わるアレスチン様タンパク質を遺伝学的手法を用いて同定した。このタンパク質はユビキチンリガーゼPub1と結合してそれ自身がユビキチン化を受け、Cat1のエンドサイトーシスを制御していた。本成果は分裂酵母のアレスチン様タンパク質の初めての詳細な機能解析となる。
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