研究課題
酵母からヒトまで真核生物全般に渡って進化上保存されているTORC2 (TOR complex 2)-Akt経路は、多細胞生物であるヒトではインシュリン刺激を通じて細胞外環境のグルコースに反応し、単細胞生物である分裂酵母では細胞外環境のグルコースを直接認識し反応する。しかしながらインシュリンホルモンやグルコースがTORC2-Akt経路をどのように活性化するかその分子機構は未だ明らかではない。本研究では分裂酵母を用いてTORC2-Gad8(分裂酵母Akt相同タンパク質)経路がグルコースに応答する分子機構の解明を試みた。グルコース依存的なTORC2-Gad8経路活性化機構として、始めに、1)TORC2活性化因子Ryh1の活性化がグルコースに応答する、2)グルコース応答に関与するCyr1のPP2C様ドメインがGad8を脱リン酸化する、という2つの仮説を検討した。その結果Ryh1活性が培地中のグルコースを除去することで低下することを見出した。一方Cyr1のPP2C様ドメインはGad8を脱リン酸化しなかった。以上の結果から分裂酵母ではRyh1がグルコース依存的にTORC2活性を制御していることが明らかになった。さらに、Ryh1不活性化因子の探索を目的として分裂酵母の11個のRab GAPを解析し、そのうちの3つがRyh1を直接不活性化している可能性を示唆する結果を得た。出芽酵母では Ypt6 (Ryh1 出芽酵母ホモログ) GAP として Gyp6 が以前に同定されている。分裂酵母および出芽酵母の全 Rab GAP を対象とした HMMer、ssearch、clustal omega、Tcoffee プログラム等によるアミノ酸配列、ドメイン解析から、3つの候補の中に出芽酵母 Gyp6 の相同タンパク質が含まれていることを明らかにした。
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