研究課題
ミトコンドリアは融合と分裂によりダイナミックにその形態を変換し、エネルギー産生の他、アポトーシス等を通して真核細胞の生と死を調節するオルガネラである。申請者らのグループは、ミトコンドリア分裂に関わるDrp1:Dynamin-related-protein 1 (GTPase)のノックアウトマウス【全身(胎生致死)、脳】を作成し、分裂が初期胚発生およびシナプス形成(脳神経ネットワーク形成)に必須である事を世界で初めて報告した。近年、ミトコンドリア分裂制御の異常が神経変性疾患、肺動脈高血圧症、筋萎縮症などの一因となることが相次いで報告されてきたが、疾患発症機構および治療法解明の基盤となる“哺乳動物ミトコンドリアの分裂制御機構”の詳細は理解されていない。申請者は、分裂実行因子Drp1(GTPase)の分裂部位へのリクルートに必須なミトコンドリア膜タンパク質としてMffを同定した(JCB 2010、Small GTPases 2011)。Mffはミトコンドリア分裂の最初のステップに関与しており、分裂反応の全容解明にあたり鍵になるものと期待される。従って、その結合タンパク質を網羅的に同定できればミトコンドリア分裂機構の全容を解明できる可能性が極めて高い。 申請者は、Mffの機能部位解析の過程で、N末端50アミノ酸が機能領域として重要であることを既に報告している(JCB 2010)。最近、本領域のアミノ酸配列を様々に改変した変異体のうち、 “ミトコンドリア分裂中間体”を形成するものを見いだした。本年度はこの“ミトコンドリア分裂中間体”に含まれるタンパク質を質量分析によりいくつか得た。それらの機能を解析することで世界に先駆けて哺乳動物独自のミトコンドリア分裂機構の全容を解明できると確信する。
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