研究課題/領域番号 |
23770233
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
肥田 時征 札幌医科大学, 医学部, 助教 (90464487)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞生物学 |
研究概要 |
本研究はケラチノサイトとメラノサイトの相互作用,特にメラノソームの転送機構を解明し,皮膚色素異常症,毛髪の毛色決定機構,および皮膚悪性腫瘍におけるメラノサイトのコロナイゼーション機構を探る基礎的研究である.本年度はメラノサイト・ケラチノサイト共培養系の確立を第一目標としていた.メラノサイトはC57BL6マウス由来の株化細胞melan-aを使用した.研究に必要な細胞数を確保するため,標準的手法により培養を行い,20~25継代の細胞株を用意した.ケラチノサイトにはマウス奇形腫由来のケラチノサイト株XB2を使用した.30継代程度の細胞を準備し,増殖抑制のため,マイトマイシンC処置を施して凍結保存した.順次これらの細胞を用いて共培養を行い,両細胞の培養条件(細胞数,培養期間)の最適化を検討した.両細胞の培養に適したRPMI1640を主とした培養液を調整し,特にpHの調整を行った。メラノサイトは酸性環境下での培養結果が良好であったため,10% CO2を使用して培養できるように機器の整備を行った.形態学的観察としては,共培養によってケラチノサイトに転送されたメラノソームを位相差顕微鏡を用いて観察することができた.生化学的解析としては,一定期間の共培養後に細胞を分取し解析を行った.メラニン量を定性的に測定することができた.現在はケラチノサイトからメラノサイトへのメラノソームの転送が重力の影響を受けるか否かを検討するため,培養方法の改良を行っているところである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
第一目標である共培養系の確立はほぼ達成された.評価系として,転送されたメラニンの定性解析はできたが定量的な解析はまだできていない.また、形態学的検査として,電子顕微鏡による観察を予定していたが,光学顕微鏡レベルの観察に留まっている.以上から総合的にみて2011年度の研究達成度は20%程度である.2012年度以降は,各種解析法を同時に進めてデータを収集する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2012年度は,すでに確立・最適化された共培養系を用いて,メラニン転送の定量的解析および形態学的解析を行う.基礎的なデータが得られた段階で,各種増殖因子やメラニン転送に関わる細胞内分子の阻害剤を用いてメラニン転送にどのような影響がみられるかを検討する.マウスメラノサイト・ケラチノサイトで以上の結果が得られた時点で,ヒト細胞を用いた共培養系の確立を行う.2013年度以降はアグーチ蛋白を用いたメラニンタイプスイッチングの解析を推進する.
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次年度の研究費の使用計画 |
引き続き,細胞培養に必要な消耗品,試薬を購入する必要がある.前年度に比べてヒト正常細胞の購入,維持にかかる費用が必要となることが予想される.また,電子顕微鏡使用料やデータ解析に費用が必要である.
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