26年度は珪藻フェオダクチラムおよびオーランチオキトリウムのプロテオーム解析を中心に研究を進めた。 LC/Q-TOF MSを用いたフェオダクチラムの油滴プロテオーム解析の結果、最終的に5つの油滴局在タンパク質が見出された。これらのタンパク質のうち、油滴における存在量が最も多いと予想されたタンパク質をDLDP (Diatom Lipid Droplet Protein)とし、解析を進めた。フェオダクチラムのDLDPは既知の油滴関連タンパク質であるオレオシンに類似した疎水性ドメインを持ち、プロリン残基を含むモチーフなどの相同性が確認された。リアルタイムPCR法によるDLDPの発現解析を行ったところ、DLDPは油滴形成の誘導条件である窒素欠乏条件下で発現量が上昇していた。またこの時の細胞内の油滴の大きさとも相関が見られた。またDLDPのアミノ酸配列に基づく分子系統解析の結果、DLDPは珪藻Thalassiosira pseudonanaの機能未知タンパク質と近縁であった。以上の内容について、投稿論文の作成を完了し、投稿準備中である。本論文に間に合わなかった各タンパク質の局在解析については、蛍光抗体観察および免疫電子顕微鏡観察に必要な抗体を作成中である。 オーランチオキトリウムに関しては、RNA-Seqによる網羅的な発現解析を進めたが、対となるプロテオーム解析の解析条件検討が難しく、助成期間中にこれを完了することができなかった。引き続き、転写レベルとタンパク質レベルの同時解析を進める予定である。プロテオーム解析が困難であったため、補完的な実験としてオーランチオキトリウムのコヒーレントアンチストークスラマン分光分析を行い、細胞内油滴の成分分析を行った。その結果、細胞質に存在する油滴はトリアシルグリセロールに富むのに対し、スクアレンを含む油滴は主に液胞内に局在することが分かった。
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