研究課題/領域番号 |
23770239
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研究機関 | 沖縄科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
武田 鋼二郎 沖縄科学技術大学院大学, ジーゼロ細胞ユニット, 研究員 (90426578)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / プロテアソーム / 細胞周期 / G0期 |
研究概要 |
今年度は、G0期におけるミトコンドリア機能維持に必須なE3ユビキチンリガーゼを同定する為、網羅的スクリーニングをおこなった。準備として分裂酵母G0期で効率的にプロテアソームを阻害する必要があるため、分裂酵母でも使用可能なプロテアソーム阻害剤を探索した。その結果、抗がん剤として使用されるボルテゾミブがin vivoでプロテアソームの活性をよく阻害する事を見出し、論文として報告した(Takeda et al, 2011, PLoS One)。E3リガーゼのスクリーニングは、変異体や遺伝子破壊株が利用可能なE3リガーゼ遺伝子のうち、約8割(70変異株)まで終了した。G0期で生存率を維持できないE3変異株は16株、ミトコンドリアに何らかの異常を示すものは20株、両方の表現型を示すものは6株であった。G0期で生存率が低下し、かつミトコンドリアに異常を示す変異株のうち、pqr1変異株はG0期においてプロテアソーム阻害によって引き起こされるミトコンドリアのオートファジーによる分解(mitophagy)に欠損が見られた。pqr1変異株においてはミトコンドリアが高度に断片化していることから、本研究課題の目標から考えて非常に興味深く、さらに機能解析を行う予定である。Pqr1遺伝子はRING fingerドメインを持ち、出芽酵母では保存されていないがヒトを含むmetazoaは低い率ながら相同性を示すタンパク質が存在する。また、pqr1以外にもミトコンドリア形態に異常をしめすE3変異株を取得しており、これらは本研究課題の直接的なターゲットではないが、興味深い副産物と言える
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
変異体スクリーニングに予想したよりも時間を要した。小さな異常も見逃さない様に、G0期に誘導してから4週間まで数日毎に詳細に顕微鏡観察をおこなったが、スクリーニングが概ね終了した現在から考えると、1週間までの観察で十分であったと言える。また、取得したpqr1の機能解析はについても、Pqr1タンパク質の細胞内局在観察や結合タンパク質同定を、Pqr1にエピトープタグを付加する事で行おうとしたのであるが、pqr1はN末端、C末端のどちらにタグを付加しても機能を失ってしまう事が判明したため、解析が進んでいない。今後はタグの種類を検討することと並行して、ポリクローナル抗体作製の準備も進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
Pqr1遺伝子の機能解析を進める。具体的には機能的なエピトープタギングタンパク質の作製やポリクローナル抗体の作製によって、Pqr1タンパク質の細胞内局在や結合タンパク質の同定等を目指す。また、pqr1変異株においてmitophagyが異常を示すのは間違いがないが、オートファジーそのものの異常の有無を検討する必要がある。 ミトコンドリアタンパク質でユビキチン/プロテアソーム経路の基質となっているタンパク質の同定も試みる。G0期でプロテアソームを阻害するとミトコンドリア自体がオートファジーに依って分解されてしまう為、ミトコンドリアに蓄積しているはずの基質タンパク質も同時に分解されてしまい、生化学的に精製する事が困難であった。これを乗り越える為に、プロテアソームとオートファジーの二重変異株内でヒスチジンタグとFLAGタグが付加したユビキチンをそれぞれ発現することができるシステムを構築した。これを用いるとオートファジーによる影響を受けずにミトコンドリアを分画することができる。このシステムを用いて、次年度は基質タンパク質の同定を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
基質タンパク質を精製する為の生化学実験の消耗品(アフィニティー精製用の消耗品、抗体など)に多くの研究費を使用する予定である。また研究の速度をあげる為に、必要に応じてエピトープタグ株の構築等の目的で人工合成遺伝子の外注も利用したい。1~2回の国内学会の参加も予定しており、その旅費も研究費から支出する予定である。
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