研究概要 |
平成23年度までに、分裂酵母G0(静止)期においてMitophagy (ミトコンドリアがオートファジー依存的に分解される現象)に何らかの異常をしめすユビキチン E3リガーゼ変異体のスクリーニングをおこなった。その結果、潜在的なRING finger型E3リガーゼであるPqr1の遺伝子破壊株が、G0期のミトコンドリア形態、mitophagy, 生存率の維持のいずれにも顕著な異常を示すことが明らかとなった。この結果を受けて平成24年度は主にPqr1の機能解析をおこなった。Pqr1に緑色蛍光タンパク質を融合したPqr1-GFPの細胞内の局在を観察したところ、Pqr1は細胞質にドット状に局在することがわかった。これがミトコンドリアであるかどうかは現在のところ不明である。Pqr1-GFPはGFP付加によってタンパク質の活性が低下するようであったので、ポリクローン抗体作製の準備を開始し、現在も継続している。Pqr1遺伝子破壊株の示すmitophagy欠損の表現型が、(1) mitophagy特異的であるのか、 (2) オートファジーの活性が全般的に異常となるのか、がPqr1研究の上で重要なポイントとなる。これを明らかとする為に、GFP-Atg8を用いたgeneral autophagy活性を評価するシステムを導入し、pqr1遺伝子破壊株でオートファジー活性を検討した。結果、pqr1遺伝子破壊株中ではオートファジー活性自体が(完全に阻害される訳ではないけれども)影響を受けることが判明した。Pqr1はmitophagy特異的な因子ではなく、むしろ全般的なオートファジー活性に関わるタンパク質であるのかもしれない。この実験系では定量的な評価が重要となるので、どちらの可能性も留保しつつ、引き続き研究を進める。今後、論文発表の準備を開始する予定である。
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