研究課題/領域番号 |
23770240
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
宮坂 恒太 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (20590300)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | メカニカルストレス / microRNA / 脂質代謝 |
研究概要 |
本申請研究の目的はメカニカルストレスによるmicroRNAをはじめとする遺伝子の発現制御機構(メカノトランスダクション)を解明し、ストレスに応じた細胞応答を解析することである。申請者は、non-coding RNAの一種であるmicroRNA-143 (miR-143)が、機械的な伸展刺激によって発現が誘導されることを既に明らかにしている。初年度は機械的刺激を細胞内で可視化するため、マウス由来の培養筋芽細胞であるC2C12に、miR-143のプロモーター直下にルシフェラーゼ遺伝子をつないだプラスミドを発現させ、伸展刺激下やせん断応力負荷下で発光を検出した。その結果、刺激に応じた発光の変化が確認され、メカニカルストレスの可視化に成功した。さらに、伸展のパターンやせん断応力の圧力を変化させることで、発光の強度が変化することも確認された。 次に、伸展刺激への細胞応答を検証するため、miR143の発現を指標にしてC2C12に伸展刺激を負荷し、遺伝子発現変化をQ-PCRによって定量した。すると、伸展細胞で筋分化マーカーの発現が上昇し、筋分化誘導条件でなくとも、機械的刺激によって筋分化が促進されることを見出した。さらに、より効率的に筋分化を誘導できる伸展条件の検討も行い、条件を最適化することに成功した。この伸展条件下で、miR-21、miR-143、MKL2などの当研究室により機械刺激応答性が確認されている因子のノックダウンを行い、miR-143とMKL2の減少により、機械刺激依存的な筋分化が抑制されることを明らかにした。また、伸展刺激は筋分化だけではなく、同時に細胞内の代謝を変化させることもわかり、脂質代謝に関与するmiR143の機械刺激に応じた代謝制御機構の存在を示唆する結果が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画書に記載した初年度の目標は、機械的刺激の可視化であった。この目標に関しては、miR-143のプロモーターの同定、機械刺激依存できな発光の確認は成功しているので、十分に果たされたと考えている。miR-143のプロモーター全長ではなく、ある程度の領域の絞り込みに関しても進行しており、ある程度の領域特異性が確認され始めている。領域の決定は次年度に持ち越しとなったが、計画はおおむね順調である。 また、細胞の応答に関しては、想定した以上の劇的な変化が観察されており、追加の研究を計画しているが、次年度の準備も整っており、当初の計画以上に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究により同定されたmiR-143のプロモーター領域をさらに絞り込み、機械刺激依存的な領域を決定するために、遺伝子変異を挿入したプラスミドを作成し解析を行う。得られた領域からレポーター遺伝子を設計し、ライブイメージングが容易なゼブラフィッシュに導入し、心拍動や血液循環の停止、血圧の上昇を強制的に誘導した際に、内在性のmiR-143の発現変動を模倣できるかを確認する。 伸展刺激による細胞応答として、細胞分化誘導と脂質代謝亢進が観察された。この反応に関与しているのは、miR143とMKL2であることが予備実験から推測されているため、これらの因子の分化マーカーの発現制御にどのように関わっているか、ノックダウンや過剰発現、免疫沈降などを用いて、機械刺激依存的に活性化する特異的なシグナル経路を探索する。 miR-143 / 145- KOマウスは現在作成中であり、個体が得られ次第、大動脈窄縮術への反応性を観察し、マラソン耐久テストにより骨格筋のリモデリング状態や代謝活性を観察する。さらに、代謝異常マウスの解析に多用される、高脂肪食飼育、寒冷暴露など、多様な解析を行い、全身性の代謝におけるmiR-143の機能を考察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
代謝や筋分化マーカーの発現の検証にはQ-PCRを用いる。標的は15ほどなので、Q-PCRの酵素も含め、合成オリゴと試薬として40万円を計上した。また、分化の効率を検証するために、免疫組織化学による染色を行うが、その抗体として20万円を計上している。その他、細胞培養のためのプラスチック製品として5万円を計上した。また、ノックアウトマウスの維持に5万円を計上した。 成果発表の場として、分子生物学会と内分泌学会への参加を予定している。そのための旅費を20万円を計上した。また論文投稿のための校閲、投稿料として、計20万円を計上した。
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