本研究の目的は、メカニカルストレスによるmicroRNAの発現制御機構(メカノトランスダクション)を解明し、ストレスに応じたmicroRNAの機能を解析することである。 近年の報告により、拍動や血流などのメカニカルストレスが心臓や血管形成に必須であることが明らかとなってきたが、実際にメカニカルストレスと器官形成を架橋する因子の同定には至っていない。そこで申請者は酸化ストレスや熱ストレスなど、生体に負荷される様々なストレスに応答して発現することが報告されているmicroRNAに着目し、メカニカルストレスと生命現象を架橋する因子と想定した。さらに予備的な実験により、幾つかのmiRNAは脂肪分化・代謝に関与していることが明らかとなった。このことから、運動すなわち、メカニカルストレスによる脂肪代謝の制御にもmiRNAが関与している可能性が考えられる。これらに着想された本研究では、(1)メカニカルストレスによるmiRNAの発現制御機構の解明、(2)脂肪分化制御におけるmiRNAの機能を生体レベルの解析を目的とした。 初年度の解析により、microRNAの機械刺激依存的なプロモーターを同定し、蛍光タンパクを繋げてゼブラフィッシュに導入することで、拍動依存的に心臓に蛍光を発するゼブラフィッシュを作出することに成功した。最終年度にはそのmicroRNAの機能解析を進め、論文を投稿した。microRNAによる代謝制御に関しては、microRNAの下流の因子を網羅的に解析することにより、特定の因子を同定し、そのノックアウトマウスを作成して解析を行った。すると、脂質代謝の亢進、および運動耐性の上昇が観察された。マウスの解析は論文投稿へ向け、鋭意継続中である。
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