研究課題/領域番号 |
23770241
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
谷口 俊介 筑波大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (00505331)
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キーワード | 発生・分化 / 体軸形成 |
研究概要 |
多細胞生物が三次元の体を構築するためには、一次軸(e.g.前―後)、二次軸(e.g.左―右)の各体軸に沿った細胞・組織・器官の正確な分化と配置が必要である。本申請研究の目的は体軸形成過程でその領域サイズが決定される神経外胚葉に着目し、一次軸および二次軸形成に関与するシグナル分子が神経外胚葉のサイズ決定に関わるメカニズムを解析することである。 本年度は二次軸形成因子のNodalが神経外胚葉サイズ決定を制御している点に関して、Nodalシグナルが実際に相互作用しているシグナル経路の探索を中心に解析を行った。一次軸形成を担うとされているWntシグナル全てをノックダウンするためにWntの受容体であるLRP5/6のノックダウンを行い、一次軸形成を阻害した。その条件下ではNodal自体が発現しないためNodalとWntの関係を探るには不適切であった。そこでWntシグナルのうち、Wnt-JNK経路のみ阻害したところNodalの発現は見られたため、Wnt-JNK阻害胚においてNodal阻害を行ったところ神経外胚葉サイズがNodalだけ阻害した胚よりも大きくなったことが確かめられた。このことからWnt-JNK経路とNodalシグナルが相互作用している可能性が示唆されたが、細胞内細胞外いずれかで影響しているのかが未だに不明である。 さらにNodal経路が神経外胚葉形成因子であるFoxQ2の発現を直接制御している可能性を調べるためFoxQ2の発現調節解析を行ったがゲノム情報の欠如から調節領域全体を探ることが出来ていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウニの体軸形成過程において二次軸形成因子のNodalが一次軸形成のWnt-JNK経路と相互作用している可能性を示唆できたのは非常に大きな進歩である。しかし一方で、Nodalシグナルが神経外胚葉因子FoxQ2の発現調節とどのように関与しているのかを探るために行っているFoxQ2の発現調節解析が想定通り進んでいない。これは日本産バフンウニのゲノム情報が欠如していることが原因であり、その情報の整備を続けている状態である。
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今後の研究の推進方策 |
ゲノム情報の欠如からFoxQ2の発現調節解析が計画通り進んでいないため、使用予定予算に未使用研究費が生じた。今年度に引き続き、FoxQ2が存在するゲノム領域の情報整備を行い、実際に発現調節解析を行いNodalシグナルとの関係を明らかにする。 また、NodalとWnt-JNK経路の関係をより詳細に解析する。その時空間的な相互作用を明らかにし、体軸形成を担うシグナル経路同士の関わりを明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
発現調節解析には大量のプライマーセット、PCR酵素、DNA抽出キット等を使用する。また、シーケンス解析も高頻度で行うためそれらに次年度の予算を使用する。さらに本プロジェクトの結果の論文公表も予定しているため英文校閲費用および論文投稿に予算を使用する計画である。
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