平成24年度では東日本大震災により東北大学加齢医学研究所の実験機器が使用出来ないものがあり、そのため30万円分を繰り越した。本年度は東北大学が所有する3次元断層撮影装置OPTスキャナーを用いて肢芽の3次元の形態を解析する事が出来た。12時間おきに肢芽の変形の様子をOPTスキャナーを用いて撮影し、厚み成分の情報をAvizoを用いて抽出した。昨年度までの2次元平面における肢芽の変形のメカニズムのデータと組み合わせ、3次元における肢芽の伸長パターンを定量的に理解出来る手法を開発した。この手法を用いて単位時間当たりに組織の増加率が大きい部位を特定し、その部位をcharacteristic growth modeと名付けた。この特徴量は発生時に器官全体が変形して行く時に特徴的に組織が大きくなっている場所である。この場所はこれまでの細胞レベルの解析では明らかに出来なかった。これは細胞レベルの解析では組織全体の変形量を定量的に理解することが出来なかったからである。さらに変形量からバイアスして組織が歪む方向と量を特徴量Anisotropyを計算した。この結果肢芽の細胞集団は全体に渡って遠近軸に沿ってバイアスして変形して行くと言う事が明らかとなった。これまで肢芽の変形は先端側の組織の増殖が大きく、それが遠位側に向かって肢芽が成長する原動力の可能性が示唆されてきた。しかしながら本結果は組織全体が均等にすこしずつ遠近軸に沿ってバイアスして変形を起こせば遠近軸に沿って器官全体が伸長していくメカニズムを説明出来ると言うこれまでにないメカニズムを提唱出来た。本解析手法は肢芽だけではなく今後は肢芽以外の脳や他の器官における3次元の変形パターンの解析に極めて有用であると考えられる。本研究をまとめてJ. Theor. Biol.に発表した。
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