研究課題
本研究は、ゼブラフィッシュの体表模様を用いたパターン形成機構の分子機構の解明を目的としている。特に、コネキシンをはじめとするチャネル分子及び、変異体解析により得られた膜蛋白質の解析を進めている。H24年度は、まず、ゼブラフィッシュの体表における黒色素胞と黄色素胞の構造解析を行った。パターンを作るための因子として、これまでにいくつかの膜蛋白質を同定してきた。これらの中には細胞間相互作用に重要であることが予想される因子も含まれるが、一方で、黒色素胞と黄色素胞が直接接触していることを示すデータがなかった。この矛盾を解決するため、電子顕微鏡観察を行い、黒色素胞が~200um以上にもなる仮足を伸ばし、直接的に黄色素胞に接触している様子をとらえることができた。この結果は、パターン形成における反応拡散モデルの中の拡散項が、細胞の仮足により形成している可能性を示唆するものである。また、昨年度に単離した、パターン変異体の原因遺伝子、igsf11, tspan3cのうち、igsf11の解析を行い、検出されたアミノ酸変異が接着因子の接着能に関与していることをin vitroの実験により示した。また、野生型と変異型との比較により、この変異によって黒色素胞の生存能の低下がみられ、細胞の維持に重要であることが明らかとなった。前年度までに、N末構造の重要性を示したコネキシン研究に関しては、変異体の電子顕微鏡観察により、細胞分化にも関与している可能性を示すデータが得られた。また、in vitro系での、細胞間接触時の膜電位変化の測定により、コネキシン変異体では野生型に比べ、脱分極が極めて短時間しか維持されないことがわかってきた。現在、この現象の細胞間相互作用における意義を解明するための研究を進めている。
2: おおむね順調に進展している
H24年度は、本申請に関わる研究成果を論文として3報報告した。一方で、HeLa細胞で行うことを計画していた電気生理実験に関しては、研究対象とするタンパク質がHeLa細胞に適合していないことがわかり、現在、アフリカツメガエルの未受精卵を用いた実験に切り替え、その準備を行っている。
コネキシン研究に関して、ラットコネキシン遺伝子を用いた遺伝子組み換えゼブラフィッシュのF1, F2世代が育ってきたので、電気生理解析と表現型の解析を並行して行う。模様変異体、遺伝子組み換え体の電子顕微鏡解析を行い、細胞分化におけるコネキシンの機能解析を進める。さらに、次世代シークエンサーを用いた野生型-変異体間のトランスクリプトーム比較解析を行う。in vitroにおける膜電位感受性色素を用いた実験を発展させ、ライブでギャップ結合の形成を観察する系の構築を目指す。模様変異体の原因遺伝子として単離したtspan3遺伝子に関して、検出された変異(I18Rアミノ酸置換)が細胞内でどのような影響を与えているかを明らかにする。EGFPシグナルを結合させたtspan3遺伝子をゼブラフィッシュ、あるいは培養細胞で発現させて、その違いを明らかにする。tspan3はインテグリンなどの膜蛋白質を束ねるという機能が知られているので、細胞移動に重要な因子であると予想される。本研究では、in vitroの実験系を用いて、I18R変異が、細胞移動においてどのように影響するのか、さらには黄色素胞と黒色素胞の相互作用(相互排除、あるいは黄色素胞から黒色素胞への活性化)にどのような影響をもたらすのかを解明する。
アフリカツメガエルの飼育用の水槽、アフリカツメガエル生体の購入をする(10万円程度)。5月に日本発生生物学会で成果発表、9月に日本動物学会内で魚類色素細胞のシンポジウムを主催するので、これに旅費をあてる。H25年度前半にTspan3cに関する論文を投稿予定であり、その掲載費に10~20万円予定している。それ以外は、当初の予定通り、試薬等の消耗品の購入費に充てる。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
PLoS Genetics
巻: 8 ページ: e1002899
doi:10.1371/journal.pgen.1002899
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Pigment Cell & Melanoma Research
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DOI: 10.1111/j.1755-148X.2012.00984.x
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/labs/skondo/research_laboJ.html