研究概要 |
本研究では、転写制御因子SOX2とそのパートナー因子の協調的作用による感覚器原基の特異化機構の解明を目的として行った。 24年度は、嗅上皮・内耳プラコードで活性を示すエンハンサーNOP1の活性化に重要な転写制御因子群SOX2とSall4の協調的作用について検討した。SOX2のドミナントネガティブフォームは、エンハンサーNOP1の活性を完全に阻害する。Sall4についても2つのドミナントネガティブフォームを作成して、エンハンサーNOP1への作用を検討した。その結果、若干の阻害効果は観察されたが、エンハンサー活性に大きな影響を及ぼさなかった。このことは、ドミナントネガティブフォームがうまく機能していない可能性が考えられた。さらにSall4の機能を検討するため、RNAiやMOを用いた阻害実験を行う。 本研究では、嗅上皮・内耳プラコードで活性を示すエンハンサーNOP1の発現制御機構について、以下のことを明らかにすることができた。 エンハンサーNOP1は、SOX転写因子とSall4の協調的作用によって活性化される。SOX転写因子としては、グループBに属するSOX2,3とグループEに属するSOX8,9,10がSall4と協調的に働き、グループCに属するSOX11は働かない。このことはSall4との協調的作用には、グループ特異性があることを示す。さらにin vitroでは、グループE SOXがより強くエンハンサーを活性化することができた。細胞分化の進行に伴って、SOX転写因子群の使い分けによって、詳細な遺伝子の発現量を制御している可能性がある。 エンハンサーNOP1は、SOXとSall4の協調的な作用による活性化機構と複数の抑制エレメントによる抑制機構によってその特異性が制御される。このような機構が、嗅上皮・内耳の共通の前駆体の特異化の一端を担っているのではないかと考えられる。
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