研究課題/領域番号 |
23770255
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
寺林 健 熊本大学, 発生医学研究所, COEリサーチアソシエイト (40452429)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 後腎間葉 / 腎臓発生 / キネシン / 微小管 / リン酸化 / ユビキチン化 |
研究概要 |
多様な機能分子の輸送に関わるモーター分子群キネシンスーパーファミリー蛋白(KIFs)のひとつであるKif26bは、そのノックアウトマウスが腎臓欠損という非常に重篤な表現型を示す。胎生期の腎臓においてKif26bは腎臓前駆体細胞である後腎間葉に限局し、後腎間葉から分化した上皮細胞集団で発現が見られない。また、これまでの研究成果から申請者はKif26b結合蛋白質としてE3ユビキチンリガーゼであるNedd4を同定していた。これらのことは後腎間葉の分化においてNedd4がKif26bの分解を制御している可能性を示唆する。本研究ではNedd4によるKif26bの制御機構と同機構の後腎間葉分化における生理的意義の解明を試みた。申請者はKif26bとNedd4の結合様式について解析を行ない、Kif26bのThr1859とSer1962がCDK5によってリン酸化を受けること、これら残基のリン酸化はKif26bとNedd4との結合を促進することを見出した。さらにNedd4はユビキチンLys48を介してKif26bをユビキチン化すること、RNAi法による内在性Nedd4のノックダウンによりKif26bのユビキチン化が減少することも見出している。また、微小管重合阻害剤ノコダゾール処理により、Kif26bのリン酸化ならびにユビキチン化が亢進した。これらの結果から、後腎間葉の上皮化に伴う細胞骨格の再構成により微小管から遊離したKif26bがCDK5によるリン酸化、さらにNedd4によるユビキチン化を受け、その後プロテアソーム経路により分解されることがそ予想される。現在、胎生期の腎臓におけるKif26bのリン酸化・ユビキチン化の同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腎臓発生に必須であるKif26bの分解制御機構について解析を行い、これまで得られた結果から、微小管から遊離したKif26bはCDK5によるリン酸化と、それにより誘導されるNedd4によるユビキチン化を受け、結果としてユビキチン-プロテアソーム経路によって分解されることが示唆された。このことから、後腎間葉の上皮化に伴う微小管細胞骨格の再構成がKif26bの分解を誘導すると予想される。平成23年度の研究実施計画ではKif26bのリン酸化、ユビキチン化のメカニズムの解明を目標としていたが、これまでに得られている結果は当初の計画を大幅に上回っており、研究は順調に進展してるということが出来る。腎臓発生過程におけるKif26b転写制御機構については、使用予定のマウスにトラブルが発生したことから、研究の進捗状況として遅れている。両研究計画を考え合わせると、全体としての研究状況はおおむね順調に進展していると考えることが出来る。
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今後の研究の推進方策 |
当研究計画は腎臓発生におけるKif26bタンパク質分解、転写の両制御機構の解明を目的と目標として掲げている。Kif26bタンパク質分解機構の解析では大きな成果が得られた一方で、Kif26b転写制御機構の解析に必要なマウスにトラブルが発生したことから、研究の進展状況としてはかなり遅れている。これまでの研究の進捗状況ならびにその発展性を考え合わせたうえ、平成24年度はKif26bタンパク質分解に重点を置いて研究を行うこととする。現在、後腎間葉の上皮化におけるKif26bタンパク質分解機構の重要性を解析しており、結果が得られ次第論文として発表をすることを第一の目標とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
1.CDK5によるKif26bのリン酸化機構の解明抗リン酸化Kif26b抗体を用いてウェスタンブロッティングを行い、発生過程の腎臓における内在性Kif26bのリン酸化を検出する。さらに免疫組織染色を行うことで、後腎間葉分化のどの段階でKif26bのリン酸化がおこるのかを検証する。さらにCDK5によるKif26bのリン酸化を誘導するシグナル伝達経路の解明を行う。後腎間葉は尿管芽との接触の後、自らが分泌するWnt4により上皮化・分化が開始することから、特にWntシグナルに着目し、Wnt刺激によってKif26bのリン酸化が亢進するかなどを検証する。2.Nedd4によるKif26bのユビキチン化機構の解明後腎間葉の初代培養もしくは器官培養した発生過程の腎臓を用いて内在性Kif26bのユビキチン化を検出する。さらにNedd4のノックダウンを行いKif26bのユビキチン化における内在性Nedd4の重要性を確立する。また、CDK5ノックアウトマウスを用いてKif26bのリン酸化・ユビキチン化にCDK5の重要性についても検証を行う。3.後腎間葉の未分化状態維持におけるKif26bの重要性の解明レンチウィルスを用いて後腎間葉での遺伝子発現系の確立し、in vitroでの後腎間葉分化誘導培養(Organ culture, Colony assay)を行ない、Kif26bが後腎間葉の分化抑制能を示すか(コロニー形成や上皮化、管腔構造の形成を阻害するか、各分子マーカーの発現の確認など)を検証する。
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