平成26年度はbantam microRNAとinsulin/IGFシグナルの成虫原基間における活性とサイズの間の関係の検証、およびimaginal disc growth factor(IDGF)の機能解析に関する実験を行った。IDGFに関しては6つの遺伝子のいくつかを同時に不活性化させるRNAiコンストラクトのシリーズを作成し、形質転換バエを作成した。このように多数の遺伝子を一度に不活性化させる試みは世界的にも初めての試みであり、困難を極めた。25年度にはインシュリン欠損様の表現型が認められたことから一度は実験系が正しく働いているかと思われたが、更なる検証によりこの効果はコンストラクトの複雑性に起因するある種のoff target効果によるものであることが示された。しかしながら26年度においてRNAiコンストラクトのデザインに更に改良を加えることにより、ついに真のIDGF欠損の効果を観察することが出来た。更にoff target効果の可能性を排除するために標的とならないcDNAを用いたレスキューコンストラクトを作成し、この可能性を排除することを試みた。そのためにレスキューコンストラクトを持った形質転換ハエを作成し、必要なハエの掛け合わせを進めた。またCrisper/Cas9システムを用いてゲノム上のIDGF遺伝子を直接破壊するために必要な一連のコンストラクトも作成し、ハエに導入して遺伝子欠損を誘導した。すると遺伝子ごとに欠損が誘導される頻度が大幅に異なり、全ての遺伝子を同時に欠損させることは出来なかった。この結果はコンストラクト中における遺伝子の並び順に影響を受けている可能性が考えられたため、さらにインシュレーター配列を導入した改良型のシステムを作成した。またbantamとinsulin/IGFに関しては成虫原基間における活性 の違いを検出するシステムに修正を加えたコンストラクトを作成し翅原基におけるシグナルの活性化様式を調べた。
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