研究課題/領域番号 |
23770259
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
豊岡 やよい 基礎生物学研究所, 初期発生研究部門, 助教 (20360597)
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キーワード | 栄養外胚葉 |
研究概要 |
trophoblast細胞の分化決定機構に関する2つの仮説についての検証という主目的は、Cdx2-EGFPレポーターマウス系統を使用して十分達成出来る見込みであり、ほぼ計画通りにデータを蓄積できていると思われる。 さらなる知見の積み重ねを目指して、Cdx2-EGFPレポーターマウスと細胞核が赤色の蛍光タンパク質で標識された H2BmCherryマウスを掛け合わせることで両方の蛍光シグナルを持つマウス系統を作製し、Cdx2の発現と細胞の移動、細胞分裂方向との関連などについてのデータを得るために実験観察を続けている。近年桑実胚期のマウス胚において外側から内側に押し込まれる細胞が少数であるが存在することを、我々を含めた幾つかの研究グループが確認し、注目している。そのような細胞の移動は、内側と外側の細胞数比の調節のために行われると推測されているが、その分化運命が前もって内側の細胞(=ICM)へと決定されているのか、それとも一度はtrophoblast細胞に運命決定された細胞が後に運命転換をさせられるのかということなどが議論の対象になっている。Cdx2遺伝子の発現を指標として、対象となる細胞がCdx2を発現しtrophoblastの状態へと一度は向かうのか、あるいはそもそもCdx2を発現しておらず内側の細胞になる運命であるがゆえに内側へ押し込まれるのか、といったことについて、細胞の動きとCdx2の発現を併せて観察することで検討できるのではないかと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
trophoblast細胞の分化決定機構について現在提唱されている2つの仮説についての検証という主目的は、Cdx2-EGFPレポーターマウス系統を使用してすでにほぼ達成済みである。次年度からはそれに基づいて新たな、より大きな発見をするために実験、観察を重ねたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度の間継続して行う予定であった以下の研究計画が平成24年 8月~11月の産前産後の休暇により一時中断してしまったため、研究活動がほぼ通常通りに行えるようになると推測される平成25年1月から、同計画を再開・実行している。 1.Cdx2遺伝子のGFP-reporting マウス系統の初期胚を用いたライブイメージング観察 胚の観察例数を十分揃えるため、23年度に引き続き24年度中も同実験を行う予定である。 2. ES細胞の培養系を用いたCdx2遺伝子の発現制御を担う因子の探索 ES細胞の培養系において、初期胚の発生過程における細胞分化のイベントをかなり正確に再現出来ることは既に良く知られている。Cdx2のreportingマウス系統の観察結果から、例えばtrophoblast細胞の分化決定が細胞表層からのシグナルにより行われていると推測されるのであれば細胞接着分子等の細胞表面分子からのシグナル、stochasticに分化決定が行われているようであれば、分泌因子の濃度の差や細胞周期などによってCdx2遺伝子の発現誘導の有無が決定されるのではないかと推測され、ES細胞の培養系を利用することで、その真偽を培養系において検証することが可能である。またCdx2-reportingマウスの初期胚から樹立したES細胞の培養系を利用して、着床前胚において発現しており尚かつCdx2遺伝子の発現を制御しているのではないかと考えられる候補分子の強制発現やノックダウン、あるいは分泌因子の培地への添加などを行い、それらの因子のCdx2遺伝子の発現誘導における役割についての検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
主に胚培養用品やデータ蓄積用のハードディスクなどの消耗品に充てる計画である。又、研究のスピードアップを計るため、企業の実験受託サービスなどを積極的に利用するための費用に充てることも検討している。
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