研究概要 |
研究期間全体を通じて,初期形態形成における細胞運動に必須のはたらきを持つと考えられる,paraxial protocadherin(PAPC)の制御機構の詳細とその役割を明らかにした。初年度では,PAPCがリン酸化とユビキチン化を受けること,それらの修飾がPAPCの正常な局在と安定性に必要であることを見いだした。最終年度はさらに詳細な解析を進め,valosin-containing protein(VCP)がユビキチン化されたPAPCのリサイクリングと分解の振り分けを担うこと,PAPCが直接的に同種親和性の細胞接着を媒介し,細胞運動に関与することなどを発見した。これらの結果をもとに,現在論文を執筆中であり,近日中に投稿の見込みである。 以上のように,掲げた研究課題のうち,「細胞接着の分子機構」について,大きな成果を得た。しかしながら,申請時から所属が異動になり,適切なモデルシステムの利用が困難になったことなどが原因となり,「Wnt/平面細胞極性経路とアクチン細胞骨格の関係」については,計画通りの成果を得られなかった。そこで最終年度は,小型魚類飼育システムの立ち上げを行った。具体的には,最大で約600個体,80系統のゼブラフィッシュを維持することのできるシステムを構築した。ゼブラフィッシュは遺伝学・発生工学・イメージングに適したモデル生物であり,形態形成・細胞の振舞い・分子機構の関係の探求に力を発揮すると考えられる。
|