研究課題/領域番号 |
23770261
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研究機関 | 基礎生物学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 誠 基礎生物学研究所, 形態形成研究部門, 助教 (10533193)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞・組織 / 発生・分化 |
研究概要 |
カルシウム経路とcGMP経路の動態を可視化する蛍光プローブを初期神経胚に発現させてタイムラプス観察を行った結果、神経管形成過程においてcGMP経路は顕著な動態変化を示さない一方で、カルシウム経路は神経上皮細胞で一定の頻度で活性が変化するという予備的データを得た。この時に、神経上皮細胞は伸張運動と頂端収縮運動を起こしたことから、神経管形成過程でのカルシウム経路は動的な性質を持ちかつ細胞形態形成を制御する可能性が示唆された。また、カルシウム経路とcGMP経路の動態を阻害する変異型コンストラクトや小分子化合物を初期神経胚に作用させて影響を解析した結果、カルモジュリン依存性蛋白質キナーゼMLCKのドミナントネガティブ変異体、膜電位依存性のカルシウムチャネルの阻害剤、更に小胞体からのカルシウム放出に関する経路の阻害剤が神経管形成を阻害することが分かった。単細胞レベルでの観察から処理胚では頂端収縮が阻害されている傾向が見られており、詳細な解析を進めている。更に、カルシウム経路の動的な性質を制御する上位の機構を明らかにするため、神経管形成過程での機能が明らかになっている細胞極性因子(非古典的Wnt/PCP経路)やアクチン結合タンパク質、非筋型ミオシンの機能を抑制した時のカルシウム動態を解析したが、現在までに明らかな変化は見られていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していた研究解析はほぼ予定通り実施でき、またカルシウム経路の新たな動態、更に細胞形態形成との機能的関連を示唆する新たな知見が得られ、次年度以降への発展が見込まれる。一方でカルシウム経路を制御する上位の機構については同定に至っておらず課題が残る。
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今後の研究の推進方策 |
予備的に得られたカルシウム動態の変化について今後は定量的に扱い統計処理を行うことで、普遍的なパターンの抽出を行う必要がある。また、そのパターンが細胞形態形成に与える影響も精査する。更に光操作技術を活用しカルシウムと細胞形態の機能的関連を実験的に検証する。また、カルシウム経路を制御する上位の機構の同定が本研究の進展には必要であり、今後は候補分子の広範なリストアップを再度行い、検証を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
支出状況はほぼ当初の計画通りであった。次年度に使用することになった研究費については、研究の遂行に必須な消耗品(分子生物学試薬を予定)の購入費として、翌年度以降に請求する研究費と合わせて使用する計画である。
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